配車アプリから半導体、自動運転、金融、医療、衛星通信、農業、鉱山開発まで――。孫正義氏が率いるソフトバンクグループと10兆円規模の「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」の投資先は一見するとバラバラであり統一感が全くない。出資先への取材を基に孫氏の目利き力を検証する。

 IT大手や自動車会社が開発を競う自動運転技術の開発。人々のライフスタイル変革を目指す孫氏は当然、この分野の企業にも出資。リアルタイム技術を駆使して、事故や渋滞のない世界を目指す。

ソフトバンク・ビジョン・ファンドなどが出資する海外2社
企業名業種出資額
米ナウト自動運転1億ドル
米マップボックス地理情報サービス1億ドル

米ナウト

自動車の危険運転、リアルタイム検出する機器を開発

 「自動運転の時代が到来する前に、人間が引き起こす自動車事故を70%減らしたい」。米ナウトのCEO、ステファン・ヘック氏が抱く野望だ。

ナウトのステファン・ヘックCEO
ナウトのステファン・ヘックCEO
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 2017年7月にソフトバンクグループなどから1億5900万ドルを調達したナウトは、運転中のドライバーの様子と周辺の状況を撮影する後付け型のデバイスを開発・販売するメーカーだ。同デバイスは車内撮影用と車外撮影用の2台のカメラやGPS(全地球測位システム)、無線通信機能などを備える。

 危険な運転や事故を自動検出し、前後の動画をクラウドに保存。後から事故の原因を特定できるようにする。動画やセンサーデータを分析してドライバーの安全運転スキルを点数に置き換え、直すべき点をアドバイスする。

 2018年6月に発売した新デバイスは、「運転中に2秒以上のよそ見をした」といったドライバーの危険な動作をリアルタイムに検出し、警告を出すようになった。米クアルコムのスマートフォン用SoC(システムズ・オン・ア・チップ)を搭載し、撮影した動画をリアルタイムに分析する。

図 ナウトが開発したカメラデバイス
図 ナウトが開発したカメラデバイス
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 新製品の想定顧客は運送事業者などの法人だ。顧客はナウトのデバイスを使うことでドライバーの運転状況を監視できるだけでなく割安な自動車保険にも加入できる。ナウトは米国で7社の自動車保険会社と提携している。

 ナウトには安全運転データの配信事業者という顔もある。デバイスから集めたデータを匿名化した上で、トヨタ自動車や独BMWといった提携先の自動車メーカーに提供している。「自動運転AIは人間のドライバーの行動を予測できるのが望ましい。そうしたAIを開発する上で、当社が提供する、人間のドライバーの行動データが役に立つ」(ヘックCEO)。