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配車アプリから半導体、自動運転、金融、医療、衛星通信、農業、鉱山開発まで――。孫正義氏が率いるソフトバンクグループと10兆円規模の「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」の投資先は一見するとバラバラであり統一感が全くない。出資先への取材を基に孫氏の目利き力を検証する。

 既存のプレーヤーに任せているだけでは難しい――。医療や金融、農業といった業界が抱える課題の解決に向けて、孫正義氏はAIを武器にした新興企業に熱心に投資し続ける。

ソフトバンク・ビジョン・ファンドなどが出資する海外4社
企業名業種出資額
中国 平安健康医療科技医療4億ドル
中国 衆安在線財産保険ネット保険5億ドル
米カベージ企業向け融資2億ドル
米プレンティ植物工場2億ドル

中国 平安健康医療科技

待ち時間ゼロのネット診療

 中国平安保険グループのオンライン診療アプリ「平安好医生」は、提供開始から3年で2億人の中国人が登録する人気サービスに成長した。

 「待ち時間3時間で診察3分。中国の医療が抱える大きな問題だ」。平安健康医療科技の王涛董事長兼CEOは語る。「そこで待ち時間ゼロのネット診療の提供に乗り出した」(王氏)。

 平安好医生は専属の医師約1000人を5カ所の拠点に配置し、24時間体制でスマホを介した診療サービスを提供している。過去3年間に蓄積した3億件以上の診断履歴や患者の病歴といったデータに基づき、医師の診断をサポートする機能「AIファミリードクター」を開発。「1人の医師が1日に診察できる件数を、一般的な病院の5倍である500件に引き上げた」(王氏)。専任医師は診察件数ではなく顧客満足度をKPI(重要業績評価指標)とする。

 3000の病院と提携し、入院が必要な患者はオンラインで予約できる。1万の薬局とも提携し、一部都市では診察後1時間以内に処方薬を配送する体制を整えたという。

オンライン医療サービス「平安好医生(Ping An Good Doctor)」でAIが診断をサポートする技術を説明する平安健康医療科技の王涛董事長兼CEO
オンライン医療サービス「平安好医生(Ping An Good Doctor)」でAIが診断をサポートする技術を説明する平安健康医療科技の王涛董事長兼CEO
(写真:陶山勉)
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中国 衆安在線財産保険

1分で1万件、AIとネットで保険無人販売

 衆安在線財産保険は「保険を再定義する」ことをビジョンに掲げるネット専業の保険会社だ。目指すのはAIによる保険業務の自動化。1分で約1万件の保険を人間を介さずに直接販売し、顧客からの質問の9割はチャットボットが自動で回答する。「動的値付け、リスク管理、顧客管理、すべてがAIの上に立つ」と許煒COOは語る。同社の従業員2500人のうち、半数をエンジニアが占める。

 同社は4年以上かけて構築したネット保険システムを他の保険会社にも提供している。2018年度には日本を含む国外への輸出を目指す。