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調査を分析するとユーザー企業はDXの推進を加速させようとしていることが分かる。一方で製品やサービスに対して「高い」「難しい」「遅い」「低い」といった課題が浮き彫りに。ベンダーが課題の解決に動かなければDXの停滞を招きかねない。

 在宅勤務のためのシステム対応は一巡。事業の競争力を高めるDX(デジタル変革)の推進に本腰を入れている──。今回の顧客満足度調査に寄せられた回答者の自由意見を踏まえると、ここ1年のユーザー企業の動きは端的にこう言える。

 2020年春以降、グループウエア/ビジネスチャット、ビデオ・音声会議システム/サービスといったテレワークなどに関連する製品やサービスはユーザー企業に定着したようだ。その他サービス業のある回答者は、2社のビデオ・音声会議システム/サービスを利用しており、「通信の安定が重要だが、(サービスについて)いずれも安定稼働している」と評価する。

 ユーザー企業ではDX推進の基盤となる業務システムの刷新も着実に進む。流通/小売業のある回答者は、PCサーバーをクラウドへ移行中で、ストレージの移行なども今後予定する。クラウドについて「できるだけIaaS(インフラストラクチャー・アズ・ア・サービス)からPaaS(プラットフォーム・アズ・ア・サービス)にシフトしたい」という。

 今回の調査に寄せられた自由意見を基に、出現頻度が高い言葉を大きさで表現するワードクラウドを作成。その結果、「コスト」「対応」「利用」「サービス」「サポート」などの文字が大きく示された。ユーザーが抱える不満や課題を読み解くと、コストが「高い」、利用などが「難しい」、ベンダーの対応などが「遅い」、サービスやサポートの質などが「低い」の4つが根強くあることが見えてきた。ユーザーのDXへの意欲を鈍らせかねないそれぞれの課題を見ていこう。

図 今回の調査に寄せられた自由意見に基づくワードクラウドと自由意見で目立った4つの課題
図 今回の調査に寄せられた自由意見に基づくワードクラウドと自由意見で目立った4つの課題
利用や対応などに関する課題が浮かび上がる
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価格改定で費用が高額に

 利用料の値上がりなどコストの高さに関する課題の指摘は、特にソフトやサービスの部門で目立った。製造業のある回答者は、利用しているグループウエアについて「価格改定でライセンス費用が高額になった。暫定で据え置きになるが、2年後は約3倍になる。他のサービスも検討する必要があるのか戸惑っている」と明かす。またグループウエア/ビジネスチャットについて「くせがなく導入しやすいものがよい」と考えている製造業のある回答者は「急な値上げやサービスの改定、改悪はやめてほしい」と訴える。

 このほか、ERP(統合基幹業務システム)について「SE費用が急きょ上がった。今後、何が値上がりするか分からず不安だ」(流通/小売業)といった声が寄せられている。

コスト高で内製へ

 SI関連サービスにも、コストに見合ったサービス提供を求める声が相次いだ。製造業のある回答者は、利用しているITコンサルティング/上流設計関連サービスについて「コストと品質、担当者スキルのバランスが悪い。SEの単価が高く感じられる」と指摘する。

 システム開発関連サービスではベンダーのスキル不足などが間接的にコスト高を招くとの指摘も目立った。商社のある回答者は「開発スキルが不足していると思われるベンダーが多い。結果、(開発を委託しても納期に間に合わないなどの理由で)コスト高になる」という。流通/小売業のある回答者は、システム保守に関連して「単純な修正でもレビューやテストの工数が大きくコスト高になっている。品質も悪いので品質改善、レビュー、テスト工数の増大という悪循環に陥っている」と指摘する。

 今回の調査では、ベンダーのコスト高なサービスに頼らず自社でシステム開発を進める内製や、他の製品やサービスへの乗り換えで対処するユーザー企業の動きも見えてきた。

図 調査に寄せられたコスト高に関する声の例
図 調査に寄せられたコスト高に関する声の例
コストの高さを理由に乗り換えの動きも
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 システム開発関連サービスには「個別案件の見積もりが高いため、大規模開発でない場合は内製で対応している」(流通/小売業)、グループウエア/ビジネスチャットでも「費用が高い点がネック。常に他のサービスの情報を収集している」(製造業)、データベースソフトについても「コストが高く、使用する立場としては他のDBを選択したい」(製造業)、「サーバーライセンスが高すぎるため全面的に(オープンソースの)PostgreSQLへ移行中」(流通/小売業)といった声が寄せられた。

 DXを推進したくてもコストに見合う成果が得られない──。ユーザー企業がこうした状況に陥らないよう、ベンダーは人材育成や開発の効率化などを通じ、費用対効果の高い製品・サービスを提供する努力が強く求められている。