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MS&ADグループが、基幹系の刷新やAI(人工知能)の導入を急ピッチで進めている。その背景にあるのは、グループの本業である損害保険事業の先行きに対する危機感だ。デジタルを活用し、既存業務を変革しつつ、新規事業の創出や海外事業の拡大を目指す。

図 損害保険業界を取り巻く危機
図 損害保険業界を取り巻く危機
火災保険や自動車保険に打撃
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 日本には「メガ損保」は3社あるが、大手損保会社は4社ある。

 メガ損保の一角を占めるMS&ADインシュアランスグループホールディングスの傘下には、大手損保会社である三井住友海上火災保険とあいおいニッセイ同和損害保険があるためだ。

 2010年4月に経営統合したMS&ADグループは中核損保会社の2社を合併せず、事務や情報システムを統合する「機能別再編」を進めてきた。

 その総仕上げが2021年7月に始まった。2社が使用する共通の保険金支払いシステム「BRIDGE」を稼働した。BRIDGEは保険金支払いに関わる顧客と担当者とのやり取りを管理するシステムだ。顧客は被害の報告から保険金の受け取りまでをWeb上などで完結できる。当初は三井住友海上の自動車保険で利用し、今後は火災保険や傷害保険といった他の保険種目や、あいおいニッセイ同和損保の各種保険にも拡大する。「ペーパレスが進み脱炭素に貢献できる」。MS&ADグループの一本木真史グループCDO(最高デジタル責任者)はそう語る。例えば自動車保険において、紙の使用量をA4用紙換算で年間約3500万枚、約140トン削減できると見込む。

 BRIDGEの開発は2015年から始め800億円を投じた。米ガイドワイアソフトウェアのパッケージソフトウエア「Guidewire ClaimCenter」を採用した。MS&ADグループは2014年に、保険の契約管理システムを「ユニティ」として共通化済み。BRIDGEで保険金支払いシステムを共通化すれば、基幹系システムの機能別再編が完了する。BRIDGE導入による業務削減効果は年間約120億円を見込む。

 BRIDGEの導入に先立ち2020年3月期には、代理店システムなどオンラインシステムを累計で約880億円をかけて刷新した。これとは別に三井住友海上がAI(人工知能)を搭載した代理店支援システムで約180億円を開発に投じた「MS1 Brain」も稼働させた。