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損保事業の屋台骨を支える自動車保険に、市場縮小の危機が迫っている。自動車保険の減収を補う新しい柱を、デジタルで生み出さなければならない。新規事業を生み出すDIと、海外に活路を見いだすDGに未来を託す。

 MS&ADインシュアランスグループホールディングスの売上高に当たる正味収入保険料は2021年3月期に3兆5009億円で、46.8%を自動車保険が占める。この比率は3メガ損保の中でMS&ADグループが最も高い。その自動車保険に危機が迫っている。少子高齢化や車離れによる契約件数の減少に加えて、自動運転の普及による保険料収入の減収が想定されるためだ。

 MS&ADグループはこの危機を、デジタル活用による新規事業の開拓(DI、デジタルイノベーション)と、デジタル活用による海外事業の拡大(DG、デジタルグローバリゼーション)によって打開しようとしている。

 ポスト自動車保険を担う新規事業は、事業のスコープを自動車から移動全般に、収入源を保険からデータビジネスへと広げることで生み出す。

 あいおいニッセイ同和損害保険はJR東日本と共同で、利用者の移動手段を自動的に判定し、移動手段に応じて報酬ポイントを付与するスマートフォンアプリケーション「JREAD」を開発。2021年2月から実証を進める。

 JREADはいわば、航空会社のマイレージ制度を様々な移動手段に広げたものだ。スマホから取得できる位置情報や速度情報を基に、公共交通機関の時刻表や地図情報などと照らし合わせて、利用者の移動手段が自動車か徒歩か電車かバスかなどを判別。移動手段に応じてポイントを付与する。

図 あいおいニッセイ同和損害保険とJR東日本が開発したMaaSアプリ「JREAD」
図 あいおいニッセイ同和損害保険とJR東日本が開発したMaaSアプリ「JREAD」
電車や徒歩でも「マイル付与」(画像:あいおいニッセイ同和損害保険)
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 たまったポイントはクーポンに交換できる。シリコンバレーのスタートアップである米コネクトIQラボのアプリ「Miles」を日本国内向けにカスタマイズした。米国ではMilesのユーザー数が120万人を超えている。

 航空会社のマイレージは顧客の囲い込みが目的だ。それに対して移動手段を限定しないJREADは、移動データや報酬ポイントによる購買データなどの活用を目的とする。例えば移動データを分析することで、移動手段ごとに異なるリスクに配慮した新しい保険商品の開発を目指す。JREADの仕組みを自治体に提供することも視野に入れる。特定の時間帯や場所で公共交通機関を使うとより多くのポイントが得られる、といったインセンティブを自治体が住民に提供できれば、住民の自動車利用を減らして、地域の渋滞を緩和できる可能性がある。