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中外製薬は「AI創薬」で有力な抗体を選ぶ期間を3分の1以下に短縮した。鹿島建設は多様な建設ロボットを開発し、現場への展開を進めている。両社とも業務を自動化するDXを推進している。

中外製薬
3カ月かかった「抗体選抜」 AI創薬で期間を3分の1に

 中外製薬は小坂達朗会長最高経営責任者(CEO)が自らDXを推し進める。デジタル部門トップの招へいや組織変革など、社内の風土改革に力を注ぐ。

 2020年3月、DXの新戦略「CHUGAI DIGITAL VISION 2030」を発表した。デジタル技術を駆使してビジネスを変革し、「社会を変えるヘルスケアソリューションを提供するトップイノベーターとなる」との目標を掲げた。それに先立つ2019年10月に組織を再編し、「デジタル・IT統轄部門」を発足。同部門のトップに、日本IBMの執行役員だった志済聡子氏を小坂会長が自らヘッドハンティングし据えた。

 同部門は2つの組織で構成する。1つは主にデジタル戦略を担う「デジタル戦略推進部」だ。実務とデジタルが分かる研究者や営業など7つの部門から若手を集めた。もう1つは「ITソリューション部」。従来型のIT部門で、24時間365日安定的にIT基盤を動かす役割を担う。

 トライ&エラーを繰り返すデジタル戦略推進部と、止まることが許されないITソリューション部。役割によって2つの組織に分けたうえで、1人の役員のもとに置いてDXで協力し合う体制を整えた。

 組織を抜本的に見直し、中外製薬が力を注ぐのが新薬創出戦略「DxD3」だ。一般に新薬を開発できる確率は3万分の1とされ、開発期間は7~13年ほどかかる。開発費も増加傾向にある。ここにAIを適用する「AI創薬」によって、開発期間を短くする狙いだ。電子カルテの情報など診療データを集めた「リアルワールドデータ(RWD)」やデジタルデバイスから取得される人の生体に関する指標「デジタルバイオマーカー」など大量のデータを活用する。

図 中外製薬が進める新薬創出戦略「DxD3」の構成要素
図 中外製薬が進める新薬創出戦略「DxD3」の構成要素
「AI創薬」を推進
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研究者の経験や勘をAIで代替

 AI創薬の成果は既に表れ始めている。医薬品の開発は一般に、標的とする分子を定め、その標的に作用する候補抗体「リード抗体」を選抜して臨床候補となる分子を絞り込んでいく。同社はリード抗体の選抜や最適化する部分にAIを活用し、短時間で有力な候補を見つけることに成功した。「従来はリード抗体の選抜に3~6カ月程度を要していたが、AIの活用によって1カ月程度に縮められた」と角田浩行研究本部創薬基盤研究部長は胸を張る。

 現在は一部のプロジェクトで成果が出ている段階だという。「ほかのプロジェクトに横展開してプロセスを変革する」(角田部長)。