労働力不足や、感染症対策としての非接触・非対面のニーズの高まりを受け、人に代わって人を手助けするサービスロボットの導入が進む。環境や運用ルールの整備も進み、「ロボットと共生する街」の実現が近づいてきた。
東京都中央区の高層マンション「大川端リバーシティ21」。造船所跡地を再開発した緑豊かなエリア一帯をロボットタウンとして、1人乗り自動運転ロボットや宅配ロボットなどを走らせるプロジェクトが進んでいる。主導するZMPは第1弾として、1人乗り自動運転ロボットの乗り放題サービスを2020年10月に開始する。
高層マンションの空き駐車場スペースを拠点に、同社が開発した1人乗り自動運転ロボット「RakuRo(ラクロ)」を配備。利用者はスマートフォンの専用アプリを使い、走行場所の確認や予約をする。ルートや行き先をあらかじめ指定し自動運転で走行する。
想定する利用者は地域の高齢者だ。徒歩圏内の買い物などに使ってもらう。「新型コロナ禍をきっかけに、徒歩圏内の生活をロボットが支援するロボットタウンづくりを進めることにした」とZMPの谷口恒社長は話す。
コロナ禍でロボット導入加速へ
世界の先進国はここ2~3年、サービス業などで労働力不足の解決策として、人の生活環境で動くサービスロボットの導入を進めた。国際ロボット連盟のリポートによると、2018年の世界のサービスロボットの売上高は前年比32%増と急増。世界では自律移動ロボットと保守点検ロボットの販売数が多い。
一方、国内ではサービスロボットの社会実装の取り組みはここ10年以上続けられてきたが、2019年まで導入は一部にとどまっていた。その状況を変えたのが、2020年春から続く新型コロナ禍だ。
「新型コロナ対策で非接触のニーズが出てきて、ロボット導入の追い風になっている」とこれまでサービスロボットの導入に取り組んできた産業技術総合研究所の比留川博久情報・人間工学領域領域長補佐は話す。
公道での移動に加え、電子商取引(EC)需要の増加で人手不足に悩む配送、さらには飲食店やコンビニエンスストアの店舗、オフィスなど、ロボットがさまざまな場所で人と共生しながら活躍する姿が身近になってきた。
これまでロボットを本格導入する際の課題だった採算性も、ロボットの価格低下や新型コロナによる配送需要の増加によりクリアしつつある。ZMPの谷口社長は大川端リバーシティ21周辺の公道で自動配送ロボットを使い宅配サービスを展開する場合、「1回の配送料金を150円程度と割安に設定しても利益が出るだろう」とそろばんをはじく。