表情豊かなロボットが公道で荷物を運び、多忙な宿泊施設では食材を客に届ける。巨大な物流倉庫では、作業棚の運搬やピッキングをロボットが担い作業員を助ける。人とロボットの二人三脚による物流DXで、宅配クライシスとコロナ禍に立ち向かう。
「宅配需要の急増に対し、人手を介さない配送ニーズが高まる中、低速・小型の自動配送ロボットについて、遠隔監視・操作の公道走行実証を年内、可能な限り早期に実行します」。2020年5月14日、政府の未来投資会議で安倍晋三前首相はこう述べた。7月17日に閣議決定した政府の「成長戦略実行計画」にもこの方針が盛り込まれた。
「公道走行実証では技術面や法制度上の課題を探るとともに、ロボットが社会でどのくらい受け入れられるかを検証したい」と経済産業省の松田圭介物流企画室室長補佐は言う。
ロボットの表情にこだわる
これまでロボットは工場など閉じた空間で使われることが多く、そこにいる人たちはロボットの使用目的やリスクを理解し、メリットも享受していた。しかし公道を走るとなれば、そのロボットによって便益を受けるわけではない人たちにもロボットの存在を受け入れてもらう必要が生じる。
社会で受け入れられるためのカギの1つはロボットの「表情」だ。
日本郵便は2020年9月下旬から10月末まで、自動配送ロボットの公道走行実証実験を実施している。東京都千代田区の東京逓信病院内のローソン店舗から麹町郵便局まで700メートルで、薬を想定した品物を運ぶ。
ZMPの宅配ロボット「DeliRo(デリロ)」を使用する。幅66×長さ96×高さ109センチメートルと小型で、人が歩く程度の速さで自律走行する。最大積載量50キログラムの配送ボックスを備える。笑顔やウインクなどの表情を表示したり、声を出して挨拶やお願いをしたりといった機能も備える。
ZMPの谷口恒社長は2016年、52歳のときに東京芸術大学大学院に入り、ロボットのデザインを研究した。その経験から「生活圏にロボットがなじむには、ロボットの意図が人間に伝わることが重要」と語る。
ZMPも独自に、パート1で紹介した「大川端リバーシティ21」周辺エリアで、DeliRoを使った低速ロボットの公道走行による配送実験を準備中だ。