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新型コロナウイルスの大流行をきっかけに飲食店でロボット活用が広がり始めた。「密」回避に加えて、真の狙いは効率化によるコスト削減だ。人手不足という課題を抱えるコンビニもロボットによる商品陳列の試験運用を開始した。

 外食大手コロワイドの連結子会社であるレインズインターナショナルは、運営する東京・赤坂の居酒屋「居酒家 土間土間 赤坂店」で、2020年7月30日からロボット1台を試験導入した。客が注文した料理をテーブルに配膳したり、食べ終わった皿を回収して洗い場に運んだりする。実験運用の期間は2カ月を予定している。

 「お下げできるものがあれば載せてください」

 中国キーンオンロボティクス製の人工知能(AI)配膳ロボット「PEANUT(ピーナッツ)」が時折こんな言葉を発しながら、店内の各テーブルを回って皿を回収する。

「居酒家 土間土間 赤坂店」が導入したAI配膳ロボット「PEANUT」
「居酒家 土間土間 赤坂店」が導入したAI配膳ロボット「PEANUT」
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 PEANUTは天井に貼り付けたラベルを赤外線カメラで読みながら自分の位置を認識する。3次元レーザーレーダー(LIDAR)や超音波センサー、衝突防止センサーなどを搭載しており、これらの情報を統合しながら自律的に運転する。走行時は音楽を鳴らして近づいていることを周囲に知らせる。前を横切る人がいれば止まる。こうした安全技術が客や従業員との「共生」を可能にした。

「目」で感情を表現

 店員がタッチパネルでテーブルを指定し、料理の皿を持って行ってもらうこともできる。目に当たる部分はLEDディスプレーとなっており、笑顔やハートマークなどで感情を表現する。客が料理の皿を取り終え、LEDディスプレーの上部、人の顔で言えば額に当たる部分に手をかざすと、ロボットが反応して動き出す。

 居酒家 土間土間 赤坂店が導入したPEANUTは、POS(販売時点情報管理)など飲食店向けシステム開発を手がける日本システムプロジェクト(JSP)が販売しているものだ。

 「新型コロナを機に問い合わせが増えている」とJSPの長谷川洋一営業部次長は話す。新型コロナの感染拡大防止に向け、飲食店で店員と客との接触を極力減らすため、ロボットが注目されるようになったのだ。

 同社には飲食店などから1日3~5件の問い合わせがある。発売後、6店舗が導入し5店舗が試験導入中だ。介護施設や図書館でもPEANUTの実証実験をしている。

 「飲食店がロボットを導入する理由は、話題性による集客効果もさることながら、効率化によるコスト削減が最も大きい」と長谷川次長は話す。PEANUTを5年リースで1台導入する費用は、設置費や保守費用も含めて300万円程度。同社によると、労力のかかる配膳や下膳を、1日当たり1900円で手助けしてくれる計算という。ホールスタッフの仕事に余裕ができれば、飲食店の働き方改革につながる。