2023年度、政府のパブリッククラウド基盤「ガバメントクラウド」へ官公庁が政府情報システムの移行を始める。その狙いの1つが、政府情報システムの運用コストを2025年度までに3割削減することへの寄与にある。だがコスト削減効果の大きい大規模システムはデジタル庁の想定通りの移行方法を採れない可能性がある。
2020年度時点で年間5400億円かかっていた政府情報システムの運用コストを2025年度までに3割削減する――。デジタル庁はこの目標を達成すべく、政府情報システムが使うシステム基盤の共通化・統合を進めている。
その目玉となる施策が2023年度に始まる。各府省庁のシステムを政府のパブリッククラウド基盤「ガバメントクラウド」上に移行させる施策である。
だが、現状の進め方では運用コストを狙い通りに削減できない可能性があり、目標達成に黄色信号がともる。
2025年度までに運用コスト3割減
足元で政府情報システムのコスト(整備・運用に関する経費)は増えている。デジタル庁が2022年12月23日に公表したところによると、同庁が一括計上した政府情報システムの2023年度のコストは4811億8800万円と2022年度当初予算比で約4.6%増えた。
河野太郎デジタル大臣は同日に開いた記者会見で、政府情報システムの運用コストの3割削減を目標とすると改めて示した。そのうえで「削減目標はあるが、サービスレベルをいかに向上させるかがまずあり、そのなかでコスト構造を見直していく」とした。
さらに「各府省がそれぞれシステムをつくりバラバラに進めてきたものに対し、デジタル庁がガバメントクラウドなどの共通基盤や共通機能を提供する。各府省庁が今使っているシステムを更改に合わせてガバメントクラウドに上げていく」と話した。ガバメントクラウドへの移行を、運用コスト削減の有力な手段として強調した格好だ。
デジタル庁の指針に沿って、2023年度から各府省庁はそれぞれの政府情報システムをガバメントクラウド上に移行させる。初年度は70弱の政府情報システムが対象で、それらは比較的小規模なシステムである。中長期的には全ての政府情報システム(外交や防衛関連など機密性の高いデータを扱うシステムを除く)をガバメントクラウド上に移行させる想定だ。
ただ政府情報システムをガバメントクラウドに移行しても全体の運用コスト削減にどの程度寄与するのか、疑問符が付く。理由は、4811億8800万円という政府情報システムのコストの約46%を占めるのが、年間の運用コストが10億円を超える大規模システムであり、そうした大規模システムはデジタル庁が想定する運用コスト削減策の適用が難しい可能性が高いからだ。