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米オラクルによるライセンス規定の変更が物議を醸している。DB最新版の小規模ライセンスで「RAC」を非サポートとしたのだ。旧版でRACを利用中の企業は移行の検討が急務となっている。

 重要システムのデータベース(DB)に米オラクルの「Oracle Database」を採用している企業は多い。より高い可用性が求められるミッションクリティカルなシステムではOracle DB独自のクラスタリング機能「Real Application Clusters(RAC)」の利用が欠かせない。RACを使えば複数のDBをアクティブな状態で稼働でき、障害が発生した際に瞬時に切り替えられる。

 Oracle DBの強みであり売り物でもあるRACが中小規模のシステムで利用できなくなる危機が迫っている。オラクルがOracle DBの最新版「19c」からライセンス規定を変更し、小規模向けライセンス「Standard Edition 2(SE2)」でRACを非サポートとしたからだ。同社はポリシー変更の理由を明らかにしていないが、「RACも使えるクラウド版へのシフトを推進するため」との見方が大勢だ。

(画面出所:日本オラクル)
(画面出所:日本オラクル)
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 SEやSE2でRACを利用することを通称「SE RAC」と呼ぶ。旧版でSE RACを利用中の企業はサポート切れまでに何らかの対策が必至で、コスト増が避けられない状況だ。

タイムリミットは最短で10カ月

 中小規模のシステムで利用が多いOracle DBのバージョンは「11g」や「12c」。どちらも既に延長サポートに入っており、期限は11g(R2)が2020年12月31日まで、12c(R1)が2022年7月31日まで。「18c」は延長サポートがなく、標準サポートが2021年6月8日までとなっている。サポートが切れた状態でも使い続けること自体は可能だが、セキュリティー関連の修正モジュール(パッチ)が適用できなくなるなど危険な状態となる。つまり、SE RACの利用企業は11g(R2)を使う最短のケースで10カ月以内に何らかの対策を打つ必要がある。

図 Oracle DBにおけるRACのサポート状況
図 Oracle DBにおけるRACのサポート状況
「19c」からRACのサポートがEEだけとなり、SE2を対象外とした
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 しかし現状、対応は進んでいないようだ。Oracle DBのパートナー企業であるシステムサポートの江川健太東京支社インフラソリューション事業部マネージャーエヴァンジェリストは「SE RACは中堅企業で基幹系システムや消費者向けサービスの基盤として使われているケースが多い。システム部門の規模が小さい企業も多く、SE RACの代替案の検討まで進めている企業はまだ少ないのではないか」と話す。