新型コロナウイルスの感染拡大がIT製品の安定供給に影を落としている。2020年2月以降、多くの中国工場で稼働率が低下したためだ。メーカーはパソコンの買い替えとスマホの5G始動という特需に応えられるか。
ノートパソコン「レッツノート」を展開するパナソニックは2020年3月5日時点で、個人向けと法人向けともに一部機種で在庫切れを起こしている。同社でパソコン事業を担当するコネクティッドソリューションズ社は「製品に使う一部の部品で入荷時期が不透明な状況となっている」(広報)と説明する。
個人向けの直販サイトでは、19モデルのうち半数以上の11モデルが在庫切れとなり、一時的に注文できない。法人向け製品も一部機種で影響が出ており、納期や出荷再開時期を法人顧客と調整しているという。在庫が回復する時期は「部品供給元の状況を精査中で、現段階では未定」(同)だ。
BTO(受注生産方式)を中心に直販パソコンを扱う、セイコーエプソン通販子会社のエプソンダイレクトも2020年2月中旬から一部機種で在庫を切らし、該当機種の新規注文を止めている。現在は中国の部品サプライヤーからの出荷再開時期や代替の調達が可能かなどを精査している。
Win7更新需要を直撃
2020年初頭のパソコン業界は2019年から続くWindows 7搭載パソコンの買い替え需要で沸いていた。IDCJapanによると、2019年の国内のパソコン出荷台数は前年比45.7パーセント増の1735万台と過去最高を記録した。
米マイクロソフトはWindows 7の延長サポートを2020年1月14日に終了したが、日本のWindows 7搭載パソコンは現在も個人法人合わせて1000万台規模で残っているとみられる。MM総研の中村成希執行役員研究部長は「2020年1~3月期もWindows 7搭載パソコンの買い替え需要は比較的高い水準で続いている」と話す。
新型コロナウイルスによるサプライチェーンの停滞はこの「特需」を直撃した格好だ。影響はパソコンメーカー全体に広がっている。パソコン世界シェア1位の中国レノボはグローバルで「(生産計画が遅れるなどの)短期的な影響があった」(レノボ・ジャパンの安田稔執行役員副社長)。
NECは国内向け法人モデルについて「もとよりパソコンの需給がひっ迫していたこともあり、短期的な品薄は発生している」(広報)。富士通も「パソコンに限らずIT機器全般で2020年3月上旬以降は当初の納期通りに納品できない可能性があると、販売パートナーや顧客企業に個別で説明し始めた」(広報)という。
外資系より日系メーカーに影響大か
一方で、部品サプライヤーの中国工場が一部で操業を再開したり、代替の調達先を確保したりして、影響の長期化を回避する動きも出てきた。NECは「中国サプライヤーの生産が再開しているなどのニュースがある。組み立ての国内工場(米沢工場)は稼働し続けており、長期的な影響は抑えられる」(広報)とする。
レノボ・ジャパンの安田副社長は「短期的な影響はあった」としたうえで、「生産はだいぶ復旧し、今後もさらに復旧する見通しだ」と話す。「影響が長引く場合、部品の調達先を増やしたり、中国以外の(自社)組み立て工場で生産量を増やしたりして対策する。(納品で)お客さまをお待たせすることはない」と完全復旧を意気込む。
ただ、影響の度合いはメーカーによって変わりそうだ。IDC Japanの市川和子グループマネージャーは「新型コロナウイルスの影響は外資系メーカーよりも国産メーカーのほうが大きい印象だ」と話す。「多くの調達先を抱える(外資系)メーカーはいち早く代替の調達先を見つけている」からだ。