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基幹系システムを支える「枯れた技術」の維持管理に危機が迫っている。枯れた技術としてはCOBOLが有名だが、今回取り上げるのはRDBだ。「Oracle Database」を扱える技術者の不足がユーザー企業で生じ始めた。

ユーザ-企業のDB技術者が減りつつある(写真はイメージ)(写真:123RF)
ユーザ-企業のDB技術者が減りつつある(写真はイメージ)(写真:123RF)
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 「今まで1度も取引のないユーザー企業からOracle DBに障害が発生したといきなり連絡を受け、復旧作業を頼まれるケースが増えている」。こう証言するのはリレーショナルデータベース(RDB)の導入や運用保守を専門とする、日本エクセムの後藤大介CEO(最高経営責任者)だ。

 こうした依頼が増えた理由について、後藤CEOは「ユーザー企業が自社システムのクラウド移行を進めた結果、社内のOracle技術者が減っているからだ」とみる。DBに関する仕事はインフラをクラウドに移しても無くなるわけではないが、後藤CEOの理屈はこうだ。

 システムをクラウドに移行したことでインフラに関する仕事が減り、インフラ技術者がユーザー企業からいなくなった。ただインフラ技術者はDB管理を担当するケースも多く、結果的にDB技術者がユーザー企業で減った─。

 Oracle技術者そのものは減っているのか。日本オラクルによると、Oracle技術者のスキルレベルの物差しでもある資格「ORACLE MASTER」の国内における累計合格者数は26万~27万人という。受験者数や合格者数は公表していないものの、同社は受験者数の全体的な傾向について「横ばい」と話す。

クラウドシフトとAI人気が原因か

 システムインフラ開発に強みを持つ大手IT企業の関係者は次のように話す。「Oracle DBを使ったシステムは多くあり、維持管理のために技術者を減らさずに確保・教育している」。インフラをクラウドに移行した余波でOracle技術者が不足気味のユーザー企業とは違って、IT企業は相応の体制を維持しているようだ。

 ただこの担当者は「資格で見ると、米アマゾン・ウェブ・サービスのクラウドサービスやAI(人工知能)、Pythonなどに関する資格の取得者が目立つようになっている」と打ち明ける。パッケージソフト開発を手掛けるシステムインテグレーターの梅田弘之社長は「AIやクラウドといった新しい技術が増えて脚光を浴びるなか、若手にとってRDBのような枯れた技術は魅力的ではないと敬遠され始めたのではないか」と分析する。

 複数社の話を総合すると、現時点でOracle技術者が大量に不足し、多くのシステムトラブルが起こっているわけではなさそうだ。ただし、Oracle技術者を志す若手は減少傾向にあるとみなせる。

クラウド時代もDBの仕事は残る

 中長期的に見るとOracle技術者が減りそうだが、「当面はOracle技術者の『需要』が大きく減ることはない」。日本エクセムの後藤CEOはこう断言する。理由は2つある。

 1つはOracle DBを使うシステムをクラウド上に移行しても、Oracle DBを運用保守する仕事は無くならないからだ。AWSのようなパブリッククラウドのIaaS(インフラストラクチャー・アズ・ア・サービス)はDBなどのミドルウエア層をサービスの対象としていない。ユーザー企業はDBを自ら運用保守するか、IT企業に運用保守を委託しなくてはいけない。サポート切れなどによるDB移行も、ユーザー企業かIT企業かが進めなければいけない。

 Oracle技術者の需要が減らないもう1つの理由は、DBの運用保守を完全に自動化する技術は開発されておらず、現状では人手による作業が欠かせないからだ。

 米オラクルは2018年4月から自社のクラウドサービス「Oracle Cloud」において、DBを自律的に運用するサービス「Autonomous DB」を提供している。Autonomous DBについてラリー・エリソン会長兼CTO(最高技術責任者)は「運用保守を担当するDBの管理者を不要にするサービスだ」と説明している。