ユーザー企業でシステム開発を内製する動きが進んでいる。だが無理解のまま進めても、結局は「社内外注」で終わりかねない。本気で効果を狙うならば、経営層には不退転の覚悟が求められる。
ユーザー企業がエンジニアを雇用し、システム開発を内製する動きが活発化している。ここ数年でシャープや良品計画、カインズなど名だたる企業が内製化に舵(かじ)を切り、エンジニアの雇用を積極的に進めている。
米国や中国に比べてデジタル活用が遅れているとされる日本企業にとって、自らシステム開発の主導権を握る内製化という方向性が望ましいのは間違いない。だが専門家らは、きちんとした理解や覚悟がないまま拙速に内製を進めれば、再び過度な外注依存に陥るリスクがあると指摘する。
SoE領域のシステム内製は19.3%
日本企業は長らく、システム開発の多くをITベンダーに外注していた。ソーシング戦略に詳しいガートナージャパンの中尾晃政ソーシング/ITサービスプリンシパルアナリストによると、日本企業でシステム開発のアウトソーシングが本格化したのは1990年代後半から。米国のアウトソースブームに追従する形で日本企業がこぞってシステム開発の外注を進めた結果、社内にノウハウがたまらなくなり情報システム部門の弱体化を招いたという。
「2000年代半ばに一部企業で内製に回帰する動きもあったが、リーマン・ショックが起こり、IT投資が再び抑制されて内製への動きが止まった。2010年代後半になってクラウドの浸透やDX(デジタルトランスフォーメーション)への関心の高まりに伴い、徐々に内製の動きが出始めたが、まだ緒に就いたばかりだ」(中尾氏)と指摘する。
情報処理推進機構(IPA)が2021年10月に公表したリポート「DX白書2021」でも、顧客接点を担い変化の激しいSoE(System of Engagement)領域のシステム開発手法について聞いたところ、「内製による自社開発を活用している」と答えた日本企業は19.3%に対し、米国企業は60.2%だった。内製化の動きはあるものの、日本企業は依然としてITベンダーに開発を依存する状況が続いている。