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地方銀行において基幹系システムの再編機運が高まっている。背景にあるのが地銀の基幹系システムの高コスト体質だ。再編のスピードを速めないと、いずれ行き詰まりを迎えかねない。

 「外部専門家に評価してもらっているが、MEJARは基幹系の共同システムでは、コストパフォーマンスが非常に高い。我々もそこは自負している」。横浜銀行と東日本銀行を傘下に持つコンコルディア・フィナンシャルグループ(FG)の片岡達也社長は2022年4~9月期の決算説明会の場で、広島銀行のMEJAR参画に関する基本合意について問われ、こう胸を張った。

 MEJARは2010年1月に始まったシステム共同化の枠組みで、コンコルディアFGの横浜銀行や東日本銀行のほか、七十七銀行、北陸銀行、北海道銀行の計5行が参加する。広島銀行は現状、ふくおかフィナンシャルグループ傘下の福岡銀行、十八親和銀行、熊本銀行の3行と「Flight21」という共同化陣営を形成し基幹系システムを共同運営しているが、2030年度にFlight21から抜け、MEJARに新たに加わる方針だ。

 広島銀行は2003年、福岡銀行と基幹系システムの共同運営を始めた。構想から4年、開発費用に180億円、開発工数に1万3000人月を投じ、中国・九州地方の有力地銀がタッグを組んだ。2009年に熊本ファミリー銀行(現熊本銀行)、2010年に親和銀行(現十八親和銀行)、2021年に旧十八銀行(同)が参加し、現在の体制になった。

信用金庫に効率性で劣る

 なぜ広島銀行は20年近く続くシステム共同化から離脱し、MEJARに参画する方針を決めたのか。狙いの1つに、コスト削減がある。広島銀行はMEJARへの参加に伴い、移行費用の償却後、基幹系システムの運用コストを現状より4割削減できると見込む。

 システムコストの削減は広島銀行に限らず、あらゆる地銀にとって優先度の高い課題だ。本業の粗利益に対する経費の割合(OHR)を改善するため、特に基幹系システムの運用など「守り」のコスト抑制は必須。ここで浮いた費用をデジタルチャネルなど「攻め」のIT投資に振り向ける狙いもある。

 地銀システムが抱えるコスト面の課題はデータにも表れている。金融庁が2020年から公表を始めた「金融機関のITガバナンス等に関する調査結果レポート」によると、システム関連経費の効率性を「システム経費/預金量」の指標で見たところ、地銀は3年連続で信用金庫に劣るという結果が出た。

表 地方銀行と信用金庫におけるシステム関連経費の効率性の比較
システム経費/預金量で比べると、地方銀行は信用金庫より非効率(出所:金融庁の資料を基に日経コンピュータ作成)
表 地方銀行と信用金庫におけるシステム関連経費の効率性の比較
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 同指標は値が小さいほど相対的に低コスト運営ができていることを示し、2021事務年度で見ると、地銀は0.16%である一方、信金は0.1%だった。2019事務年度以降、その差は縮まっていない。金融庁がその背景の1つとして指摘したのが、共同化の規模の違いだ。信金はしんきん共同センターが運営する共同利用型システム「しんきん共同システム」に9割超が参加しているが、地銀は10以上のシステム共同化が乱立している状況だ。

表 地方銀行の主な基幹系システム共同化
現在は10以上のシステム共同化が乱立している
表 地方銀行の主な基幹系システム共同化
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 具体的には、NTTデータがりそなホールディングスを含めて、5つのシステム共同化を手掛ける。MEJARのほかに、西日本シティ銀行や京都銀行などが参加する「地銀共同センター」、第二地銀が多く名を連ねる「STELLA CUBE」と「BeSTAcloud」という具合だ。

 地銀のシステム共同化を巡って、NTTデータと激しく競り合うのが日本IBMである。日本IBMはFlight21や千葉銀行が中心の「TSUBASA基幹系システム」、三菱UFJ銀行のシステムを基にした共同利用型システムを使う「Chance地銀共同化システム」、八十二銀行や武蔵野銀行などが参画する「じゅうだん会」という4つの共同化システムを手掛けている。

 ほかにもITベンダーが提供するパッケージを軸に、BIPROGY(旧日本ユニシス)は「BankVision」、日立製作所は静岡銀行と共同開発した新勘定系システムがベースの「OpenStage」や第二地銀が中心の「NEXTBASE」などを展開する。NECは「BankingWeb21」を手掛けるが、利用は東京スター銀行のみだ。