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ビジネスモデルを作成する際に忘れてはならないのが販売方法の設定だ。Webサイトの用意だけでは、必要な問い合わせ数の確保は難しい。「販売ストーリー」をつくり、非効率でもまずはアナログアプローチで実績を積み上げる。

 本連載の狙いは、新規事業を立ち上げる「事業企画力」を身に付けることです。顧客企業のDX(デジタル変革)のためには、システム開発に従事していたり、IT系企業に勤めていたりする皆さんのスキルと経験を生かす必要があります。それを新規事業立ち上げに応用する際、この連載を参考に取り組んでいただければと考えています。

 前回、筆者が以前立ち上げた勤怠管理パッケージでの失敗と成功を例に取り、事業にとって重要な「顧客での成果」について説明しました。顧客での成果の重要性を理解したところで、今回は新製品やサービスを提供する方法について説明します。

 ビジネスモデルづくりでは、事業の構成要素の1つである提供方法について設定する必要があります。提供方法には2つの意味があり、1つは販売方法、もう1つはデリバリー方法です。ここでは、事業の立ち上げに、より大きく影響を与える前者について説明します。ターゲットユーザーに製品やサービスを購入・契約してもらう方法のことです。

 いくらすばらしい価値を提供し、顧客が大きな成果を実現できる製品やサービスであっても、ターゲットユーザーに使ってもらわなくては意味がありません。しかし、SIerやソフトハウスなどのIT企業で新規事業を企画するとき、開発には注力するものの、販売方法の検討はおざなりになる場合が多いのが事実です。そのため、「製品やサービスをつくったが売れない」というケースが増えるのです。

新規事業では直接販売を設定

 販売方法には直接販売と間接販売があります。直接販売は、自社で直接ターゲットユーザーに販売する方法です。間接販売は、別の企業や団体あるいは個人との関係の上に成りたつ販売方法で、代理店販売や紹介でのキックバックなど多岐にわたります。OEM(相手先ブランドによる生産)契約も間接販売の1つといえます。

 新規事業を立ち上げる際、最初は直接販売での販売方法を設定します。なぜなら、計画通りに販売できることはまれだからです。販売開始後、例えば四半期たって計画とずれがあったかどうか、そのずれの原因は何か、予定していた販売ストーリー(後述)の通り進んでいるのかなどを検証し、必要に応じて計画を変更しながら事業を継続します。つまり事業の立ち上げ時にPDCAを回す必要があります。間接販売では、販売計画のPDCAを回すことが難しいのです。直接販売だからこそ、ターゲットユーザーの反応をダイレクトにキャッチアップし、素早く対策が打てます。

 間接販売が悪い販売方法ということではありません。ある程度の事業規模になり、ターゲットユーザーへの具体的な販売方法も固まった段階で、間接販売と並行して開始する、あるいは間接販売に移行することで、効率的に事業の拡大を促せます。