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DX人材育成には「学びが進まない」「学んでも生かせない」との懸念がある。DX先進企業はこうした懸念を払拭すべく、7つの工夫を凝らしていると分かった。学びを通してDXの成果を獲得できる工夫を一挙に紹介しよう。

工夫1 自律・成長を促す全体設計に

 第1の工夫は社員の学びが滞らないよう、自律性や成長を促すよう研修全体を設計していくことだ。以降で説明する工夫2~7を適宜、組み合わせて設計していく。具体的には、段階的な成長や実務への応用をしやすくするため、レベル別に研修を設計したり、必須研修を明示したりするのがよい。

図 DX推進企業が整備している研修の例
図 DX推進企業が整備している研修の例
DX研修設計で自律・成長を促進(資料提供:味の素(左)、アフラック生命保険(中))
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 一例が、初級、中級、上級とレベル別のDX研修を実施する味の素だ。「ITが苦手な社員や、Excelを使う程度の社員もいる」(垣内賢一コーポレートサービス本部DX推進部長)ため、初級講座は一般的なIT用語が理解できるレベルから始められるよう設計している。

 初級講座の教材に採用した、コースが850以上あるグロービスの動画学習サービス「GLOBIS 学び放題」のうち、味の素ではDXの基本知識、論理思考の基本、データ・情報分析などのコースを必須にした。「一連の流れで、業務や事業に役立つ基礎的知識を学べる」(永島学コーポレートサービス本部DX推進部ITガバナンスグループ長)ようにするためだ。特にデータ・情報分析関連のコースは、「業務で扱う様々なデータから有効なものを見つけ出して分析できるようになりたい」と考える社員が多く、好評だという。

 アフラック生命保険も、社員が自律的に能力を発揮できるようDX研修を設計している。まず各業務部門の担当者でチームを編成。「DXに関するケイパビリティ(能力)を定義し、必要なスキルを検討したうえで研修を設計している」と、江川錦栄IT・デジタル業務統括部長は説明する。例えば、「プロダクトマネジメントと呼ぶ能力を持つエキスパートには、リーダーシップやプロジェクトマネジメント(PM)などで高いスキルが必要だ」といった具合だ。

 さらにスキルを習得する座学に加えて、学んだスキルを組み合わせて能力を発揮するための演習や、OJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)を課して能力を発揮できたかを審査。パスした社員をDX関連の能力を持つ人材として認定する。このうちOJTでは「評価基準をつくり、業務で十分に能力を発揮できたかどうかを上司などが判断することで認定している」と同部の清水竜作人財マネジメント課長は説明する。

内容に応じて講師を変える

 成長を促す工夫を研修ごとに凝らしている企業の1社がSOMPOホールディングスだ。全社員向けの「DX基礎研修」と、企画人材向けの「ABCD研修」それぞれで講師や研修形態を工夫している。全5回のDX基礎研修では、AIやIoT、アジャイルといったデジタル技術に加えて、DXに取り組む意義や、社内でDXを推進する方法論などの研修もあり、社員の成長につながる幅広い内容にしている。

 ABCD研修では、実践を重視する。AI系の研修の講師はAIプロジェクトに携わる実務家だ。篠崎基デジタル・データ戦略部課長は「AI開発で大変な点や事例を豊富に紹介するので、受講者に好評だ」と手応えを感じている。

 ビッグデータ系の研修もハンズオン形式にして、「実務ですぐ役立つことを重視して設計している」(有田芳子デジタル・データ戦略部課長代理)。社内のデータ分析基盤や、社内データを熟知した社員が講師を務めており、受講者が持つExcelのデータを基盤に投入して分析できるようにもしている。コールセンター出身の講師からデータ分析の適用策を学んだある受講者は、自部署のコールセンターに戻って分析を進めるようになったという。