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 米マイクロソフトは2022年6月15日(米国時間、日本時間では同16日)に、Windows 10でのInternet Explorer(IE)のサポートを終了する。2022年6月以降にWindows Updateで配布される更新プログラムをWindows 10に適用すると、IEの起動そのものができなくなる。IEの実行ファイルである「iexplore.exe」を起動しても、代わりにMicrosoft Edgeが起動する。

 それに先立つ2021年10月5日(米国時間)に出荷が始まる次期OSであるWindows 11は、そもそもIEを搭載しない。例外としてマイクロソフトが企業向けに販売する長期サポートバージョン「Windows 10 Enterprise LTSC」や「Windows 10 IoT LTSC」、サーバーOS「Windows 10 Server」では2029年までIEのサポートが継続するものの、ほとんどのユーザーにとってIEのサポートが完全に終了する。

図 Internet Explorerなどのサポート期間
図 Internet Explorerなどのサポート期間
Windows 10でのIEサポート終了が間近
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 ユーザー企業は2022年6月までに「IEでしか動作しないWebアプリケーションを改修する」や「IEでしか動作しないWebアプリケーションを利用する際にはEdgeの『IEモード』を使うよう従業員に周知する」といった脱IEを済ませる必要がある。EdgeのIEモードは、IEでしか利用できないWebページをEdgeで表示する機能だ。IEのレンダリングエンジンである「TridentMSHTMLエンジン」を使って、IE依存のWebページを表示する。

 しかしIE依存度の高い日本では、残り時間が1年を切った現時点でも、脱IEはまだこれからなのが実情だ。

遅いのは銀行と役所

 社会的な影響が大きいにもかかわらず脱IEが進んでいないのは銀行と役所だ。銀行や信用金庫・信用組合が一般企業向けに提供する「法人向けインターネットバンキング(IB)」や、政府機関や自治体が提供する電子入札サイトや電子申請サイトの多くが、2021年10月の時点で脱IEできていない。

図 まだ脱IEしていないWebアプリケーションの例
図 まだ脱IEしていないWebアプリケーションの例
銀行と政府機関・自治体にIE依存の課題
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 銀行の法人向けIBは、セキュリティー対策としてログイン認証に電子証明書を使っている。利用者のパソコンに電子証明書をインストールしてもらい、電子証明書が確認できない場合はサイトを利用できなくする。もし利用者のIDやパスワードが第三者に盗み出されたとしても、電子証明書がインストールされたパソコンでなければ振り込みなどはできないため、なりすまし対策として有効だ。

 ところが日本の銀行の多くが、パソコンへの電子証明書のインストールにIEのプラグインである「ActiveXコントロール」を使用している。そのためIEがなければ電子証明書を使った認証を利用できない状態だ。2022年6月にIEが利用できなくなると、法人向けIBにログインできなくなってしまう。電子証明書による認証を使わない設定にすればChromeやEdgeといった他のブラウザーが利用できるとする銀行も多いが、その場合は認証がIDとパスワードだけになるため、セキュリティーが弱くなる。

 既に脱IEを済ませた銀行もある。三井住友銀行や足利銀行、京都銀行などだ。これらの銀行は法人向けIB用の電子証明書をパソコンにインストールするための専用アプリケーションを顧客に提供することで脱IEを果たした。ChromeやEdgeでも電子証明書を使った認証が可能だ。

 電子証明書インストール用アプリの提供によって脱IEを進める銀行はこれから増えそうだ。多くの地方銀行や信用組合に法人向けIBシステム「AnserBizSOL」を提供するNTTデータが、脱IEの対応を進めているためだ。NTTデータは2020年5月に、電子証明書インストール用アプリの仕組みをAnserBizSOLに追加した。京都銀行はAnserBizSOLの使用行で、2020年8月に脱IEを果たした。NTTデータによれば2021年9月の時点で、約60の銀行や信用金庫、信用組合、生命保険会社が専用アプリを利用する。

 メガバンクでは三菱UFJ銀行が現状、IEとFirefoxで電子証明書による認証に対応する。ChromeやEdgeの対応も予定するが時期は未定だ。みずほ銀行はIE以外のブラウザーについて、電子証明書ではなくワンタイムパスワードを使った認証で対応する。

 厳しいのは信用金庫の法人向けIBだ。全国に254ある信用金庫の内の248団体が、しんきん情報システムセンター(SSC)が開発する「しんきん法人インターネットバンキングシステム」を使用するが、その脱IEが済んでいない。SSCは日経コンピュータの取材に対し「(脱IEの)時期は未定だが、顧客にに迷惑をかけないよう対応する。2022年1月までにEdgeのIEモードによる動作確認を完了する予定だ」と説明している。

 焦点となるのは、EdgeのIEモードで電子証明書のインストールができるかどうかだ。現在は確認中だが、SSCは対応できる可能性が高いとみている。SSCの開示資料によれば、しんきん法人インターネットバンキングシステムは全国にある41万2000社が利用する(2020年度実績)。その多くが中小企業や個人事業主だ。EdgeのIEモードへの移行を周知するだけでも、膨大な労力が必要になりそうだ。