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経営層の号令一下、現場も改革へと動き始めた。きっかけは新規事業の創出だったり、競合に押され気味の事業のてこ入れだったりと様々。いち早く改革ののろしを上げた5人は巨大組織を内から変えようとしている。(文中敬称略)

改革の試金石 全社の力を結集する
5G Vertical Service室 室長 後藤 知範 氏

 「5G Vertical Service室 室員公募開始のお知らせ」。2020年6月24日、富士通の全社員に1通のメールが届いた。同社が掲げる7つの重点事業領域の1つ、5G(第5世代移動通信システム)関連で、新組織の5G Vertical Service室が2020年7月から活動を始めるに当たり、メンバーを公募する知らせだ。

 同室が扱うのが「ローカル5G」。企業などが5G技術を使って独自に構築する高速無線網である。富士通は2020年2月に国内企業で初めてローカル5G事業の商用免許を取得した。

 ネットワークや通信の関連部門からではなく、全社から広く公募したのはなぜか。「ローカル5Gのビジネスは通信分野ではなく、アプリケーション分野だと捉えている」。同室の室長を務める後藤知範は理由をこう説明する。

 ローカル5Gは工場や小売店などで業務と密接に関わって使われる。そのためローカル5G事業はコンサルティングから機器の選定、業務システムの開発、インフラの構築・運用まで垂直(バーティカル)なサービスを提供する必要がある。富士通の「総合力」が欠かせないため、全社からメンバーを募ったわけだ。

 社会・公共分野のセキュリティーSE出身だったが、自ら応募して室長に就任した。部下30人にはネットワーク、業種・業務、サービス開発のエンジニアが約10人ずつそろった。

 ローカル5Gの市場の立ち上がりは「早くて2022年から2023年」とみる。2022年度に本業の「テクノロジーソリューション」で利益率10%という目標達成に直接貢献するのは難しい。現在は川崎市の拠点に設けたローカル5Gの実証施設で、顧客やパートナーと技術や応用例の検証を重ねる毎日だ。

 それでも「5G Vertical Service室が結果を出さないと富士通の改革は進まない」と意気込む。同室を改革の試金石と考えるからだ。自発性を重視する人事制度に沿ってメンバーを募り、顧客のDXを支援するビジネスを手掛ける同室は、改革後の理想像と重なる。

 「夢をかたちに」。富士通がかつて掲げていたブランドプロミス(世間への約束)に憧れて入社した。「優秀な人材が入社したいと思える求心力をつくる」。そのプロミスを5G Vertical Service室で実現させていく。

後藤氏は「ローカル5Gを切り口に富士通の変革へ貢献したい」と語る(写真:陶山 勉)
後藤氏は「ローカル5Gを切り口に富士通の変革へ貢献したい」と語る(写真:陶山 勉)
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