通信各社は消費者向けと業務向けの両面で5Gの用途を広げる。仮想現実(VR)やAI(人工知能)といった最新技術と組み合わせることで、スポーツ観戦やゲーム、工場、警備の在り方を5Gで変革する狙いだ。
5Gの商用サービスが2020年春に始まった後、どれだけの早さで普及していくのか。専門家は3Gや4Gの商用サービス開始当初と同様に「5Gの特徴を生かしたキラーコンテンツやキラーデバイスが出てくるか否かが鍵を握る」(情報通信総合研究所の岸田重行上席主任研究員)とみる。
ただし「先行する米国や韓国でも5Gならではのキラーコンテンツは模索中だ」(NTTドコモの吉沢和弘社長)。キラーデバイスも同じ状況である。
そんななか国内の通信各社は2つの「連結」で5Gの用途開拓に挑む。1つはパートナー企業と共同での取り組み。もう1つはVR(仮想現実)やAI(人工知能)などデジタル技術との組み合わせである。ドコモの吉沢社長は「5Gのオープンパートナープログラムにはこれまでに3000社以上が参加し、200件近いトライアルを実施した」と話す。
各社は5Gの商用化について消費者向けと企業の業務向けという2本柱で、それぞれパートナー企業と新サービスの創出を進める。特にドコモとソフトバンクの2社は消費者に5Gのメリットを訴求しやすいゲームやスポーツ、音楽ライブなどの領域でプレサービスを積極的に仕掛けている。
ドコモ(消費者向け)
高精細CGを低遅延で配信
自室が仮想ゲームセンターに
ドコモが2019年9月18日に開催したプレサービス発表会で最も強くアピールしたのは、VRやMR(複合現実)、AR(拡張現実)といったxR技術と5Gの組み合わせによる新しいタイプのゲームである。
例えばニュージーランド・Weta Work shopが開発した「Dr. Grordbort's Invaders」というゲームだ。5Gスマホとペアリングした透過型のMRゴーグルを装着すると、ユーザーの自宅の室内がゲームフィールドに早変わりする。自室の壁から次々に湧き出る敵をコントローラーの操作で倒すデモを実演した。
カプコンの人気格闘ゲーム「ストリートファイターV」については、何も無いテーブルの上にスマホをかざすと画面上にプレーの様子が立体的に浮かび上がり、好みの角度で観戦できるというデモを披露している。現実空間にスマホをかざすとバーチャル空間の情報を重ね合わせて表示するAR技術は以前からあるが、5Gにより高精細のゲームCGを遅延なく伝送できることをアピールした。