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本業のデジタル変革を担うシステムを自社の手でつくり上げるのは必然だ。セブン&アイや良品計画、カインズなど先進企業は一斉に内製力の強化に動く。市場の変化に即応する最善手として注目が高まっているほか、開発環境の充実も追い風だ。

 「ITやDX(デジタル変革)を自社の競争優位の重要施策と位置付けるなら、外注する選択肢はあり得ない」──。セブン&アイ・ホールディングスの米谷修執行役員グループDXソリューション本部長はこう強調する。

 セブン&アイはここ数年でシステム開発の内製化に大きく舵(かじ)を切った企業の1社だ。2019年10月にエンジニア専用の採用チームを立ち上げ、既に2021年6月までに「約160人のIT/DX人材を中途採用した」(同社)。

 エンジニアがゼロの状態から着々と人員を増やして、システム開発の内製力を身に付けてきたセブン&アイ。今後も開発案件の需給を見ながらエンジニアを雇用する計画で、「少なくとも倍(さらに160人)は採用できると考えている」(米谷執行役員)という。グループ共通の会員基盤「7iD(セブンアイディ)」やCRM(顧客関係管理)など、重要施策と位置付けるシステムについては内製部隊を主体に開発・改善を進める方針だ。

内製化に力注ぐ動きが盛んに

 近年、セブン&アイのようにユーザー企業がエンジニアを雇用し、自らシステム開発に乗り出す動きが盛んになっている。

表 内製化に取り組む大手企業の例
システム開発の内製化に力注ぐ動きが活発化
表 内製化に取り組む大手企業の例
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 生活雑貨店「無印良品」を展開する良品計画は2021年9月に始まった中期経営計画(2022年8月期~2024年8月期)で、デジタル組織を新設しエンジニアなどの「プロ人材」を100人規模で中途採用する方針を示した。ホームセンター大手のカインズも2019年からエンジニアを大量に採用し、既に100人超の内製組織を構築。ユニクロを傘下に持つファーストリテイリングも2014年からデジタル戦略強化の方針を掲げて以降、エンジニアを積極的に採用。ここ数年はエンジニア向けの説明会を設けたり、最高年収2000万円を提示したりするなど優秀な人材の獲得に力を注いでいる。

 日本のITエンジニアは従来、IT企業に属するのが一般的だった。情報処理推進機構(IPA)の「IT人材白書」によると、IT人材の7割超がIT企業に属する。そのため、日本のユーザー企業はシステム開発をITベンダーに委託する形が一般的だった。米国ではユーザー企業に属する方が多くその比率は65%だ。

 こうした日本の「常識」が今、変わりつつある。デジタル戦略の巧拙が企業の成長を大きく左右するようになった結果、ユーザー企業が自らシステム開発できる力を身に付け、市場の変化に素早く対応できる体制を整えようとしているのだ。各社はIT人材を自社で抱え、ITベンダー依存からの脱却を進めている。

図 内製化のメリット
図 内製化のメリット
市場の変化に素早く対応する「スピード感」が求められるように
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