システム開発を内製する体制づくりは一足飛びには行かない。外注中心だった企業が内製に切り替えるには組織のマインドチェンジが不可欠だ。先進企業の成功の秘訣を、立ち上げ期、拡大期、成熟期のフェーズごとに明らかにする。
「エンジニアを採用さえすればシステム開発を内製できる」というのは大きな誤解だ。ITベンダーにシステム開発を外注していた企業が内製に取り組むには大きなマインドの変化が求められる。
家電量販大手エディオンの松藤伸行情報システム開発部部長は、「ITベンダーへの発注がメインだった情報システム部門を、『自ら手を動かしシステムを開発する』という内製のマインドに変えるプロセスは何よりもきつかった」と語る。
同社は2010年からシステム開発の内製化を指向していたが、2018年に取り組みを本格化した。現在は「開発を全て内製する」(松藤部長)。
基幹系も内製で
2020年11月には基幹システムをクラウド「Oracle Cloud Infrastructure(OCI)」に移行するプロジェクトを、全て内製でやり遂げた。「ITベンダーに発注すれば数億~数十億円かかる」(松藤部長)という。技術や製品に関して日本オラクルのサポートを受けたものの、設計から開発、テストまで自社の社員だけでまかなえた。
松藤部長が語るように、システム開発を外注してきたユーザー企業が内製に舵(かじ)を切るのは容易ではない。情報システム部門に求められるマインドやスキルが、外注主体とは劇的に変わるからだ。
外注であればシステムの品質を担保するためのテスト作業などは全てITベンダーに任せられた。そのため、情報システム部門に求められるスキルは社内外の調整業務やITベンダーの作業進捗管理など、マネジメント関連が中心だった。
一方、内製の場合はシステムの企画から設計、開発、最終的な品質担保まで、全てに責任を負うことになる。そのため自らコーディングするなど手を動かしてシステムを開発できるスキルが必要になる。
ただ、社内にシステムを開発できる人材が1人もいない状態から、エンジニアを集めて内製部隊の組織をつくり上げるのは容易ではない。先進企業はいかにしてチームづくりを進めてきたのだろうか。
暫定の内製チームを立ち上げ
内製組織の「立ち上げ期」で参考になるのが、国内外で宿泊施設を運営する星野リゾートの取り組みだ。同社がシステム開発の内製化に向け動き始めたのは2018年。同年に1人目のエンジニアとして入社したのが、藤井崇介情報システムグループエンジニアチームリーダーだった。