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D2C(ダイレクト・ツー・コンシューマー)を実際に採用する際、4段階でビジネスを設計する。まず第1段階では、ターゲット顧客を想定し、D2Cでどんなニーズを満たせるかを見極める。第2段階では、消費者の一連の行動と阻害要因を洗い出し、サービス形態を決めていく。

 D2C(ダイレクト・ツー・コンシューマー)はデジタル技術を用いて、従来の企業と消費者の関係性や商品の売り方を大きく変えていくビジネスモデルである。その本質はデジタルの力を使って顧客の購買プロセス、購買経験を変革すること。D2Cにはテクノロジーも深く関わるため、DX(デジタルトランスフォーメーション)時代のビジネストレンドとして、エンジニア視点からもD2Cを理解しておこう。

 今回は、企業が自社の商品・サービスの販売形態としてD2Cを採用する際、どうビジネスを設計するかの考え方を解説する。設計時に必要となる準備は、主に以下の4ステップだ。

  • [1]ターゲット顧客がD2Cで満たす想定ニーズを見極める
  • [2]最適な購買体験を設計する
  • [3]ビジネススキームを設計する
  • [4]PoC(概念実証)を行う
図 D2Cビジネスモデル設計の4ステップ
図 D2Cビジネスモデル設計の4ステップ
自社の商品・サービスの販売形態としてD2Cを採用する(出所:野村総合研究所)
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 今回は前半の[1][2]を見ていこう。

 ビジネス設計の詳細説明に入る前に、そもそも「どんな企業がD2Cの採用を検討するとよいのか」を整理しておきたい。D2Cは既存のビジネスモデルに比べ、「より個々の顧客にフィットする商品・サービスの提供」と「顧客の購買プロセスの負荷軽減」を目指す。この2点を達成して顧客満足度を高めたい企業は、D2Cビジネスの展開を検討するとよい。

 D2Cは大手からスタートアップまで、幅広い規模の企業が展開し得るビジネスモデルでもある。既存の大手企業に比べ、特に事業の立ち上げ当初は商品の開発力や知名度が高くないD2Cサービスもあるだろう。

 しかし、D2Cでは商品そのものだけでなく購買体験も含めた競争になるため、サービス全体で見るとスタートアップでも既存の大手企業と勝負できる可能性がある。既にこの連載で紹介したように、実際に米国ではスタートアップによるD2Cが注目を集めている。

 なおD2Cスタートアップ以外の、既存企業がD2Cを始める際も「D2C向けの新商品」を提供するケースが珍しくない。これは従来のビジネスを支える流通・販売チャネルとの競合を避けるためだ。

 今日の多くの企業は、自社だけでなくパートナー企業と連携し、分業制のサプライチェーンを築いている。自社内の既存部門ならびにパートナー企業の理解を得るため、D2C向けに新商品を開発して既存チャネルとは別の販売戦略を取るほうが事業を立ち上げやすいのだろう。