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 システム開発やデータ分析のできるIT人材を「内製」で着々と育てている全日本空輸(ANA)。新型コロナウイルス禍の苦境から「逆襲」するため、IT人材育成と並んで車の両輪となるのがシステム基盤の整備である。拠点となるのが、2016年3月に新設した川崎市内のデータセンターだ。ANAはここに日立製作所のブレードサーバー「BladeSymphony」と米ヴイエムウェアのサーバー仮想化ソフト「VMware vSphere」を組み合わせたプライベートクラウド環境を構築した。

 以前は羽田空港近くにあった旧データセンターで150ものシステムをオンプレミスで運用していた。これらを新データセンターへの移転に伴い再編。32システムを統廃合またはパブリッククラウドへ移行し、残りの118システムはプライベートクラウド上の仮想サーバーへと収容した。この再編作業は2019年1月に終えた。負荷に応じて柔軟にキャパシティーを増減できるようにしたほか、保守にかかる負担も大幅に軽減した。

 プライベートクラウド環境へのシステム移行と併せてANAのシステム基盤整備でターニングポイントとなったのが、2018年10月に稼働した「CX基盤(当時の呼称はCE基盤)」である。CX基盤は3階層から成り、最下層を支えるのが大規模な仮想データベースサーバーである。マイレージ会員管理システムや旅客系システム、運航系システムなどに分散しているデータベースを、仮想的に単一のデータベースとして扱えるようにする目的で構築した。

図 ANAグループが整備した「CX基盤(当時の呼称はCE基盤)」の概要
図 ANAグループが整備した「CX基盤(当時の呼称はCE基盤)」の概要
複数のデータベースを束ね、単一の「仮想データベース」として扱う
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 中間層にあるのが「利用履歴」「顧客嗜好」「顧客サポート」「運航イレギュラー」といった用途ごとのマイクロサービスである。最上層にはAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)群を整備した。空港係員の端末や客室乗務員のiPad、ANAのWebサイトなどとAPI経由でデータをやりとりする。

 新型コロナ禍前にこうしたシステム基盤の整備にめどをつけ、2020年10月からはIT人材の内製にも着手したことで車の両輪がそろったわけだ。取り組みの成果は、早くも複数の新たなシステムとして表れている。