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有志から保守を引き継ぐ

 厚労省は現在、COCOAの開発をパーソルP&Tに委託している。同社は元請けとして全体の工程管理を担当し、その配下で日本マイクロソフトが工程管理支援や技術支援に当たり、FIXERがCOCOA向けのクラウドサービスの監視業務を担当している。COCOAのバグ改修や保守開発を担当するのはエムティーアイだ。

図 新型コロナ対策で厚生労働省が調達したシステムとベンダー発注体制
図 新型コロナ対策で厚生労働省が調達したシステムとベンダー発注体制
発注内容が感染者情報管理システムから接触確認アプリに拡大
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 COCOAには基となるアプリがあることはたびたび報じられている。有志のエンジニア集団「Covid-19 Radar Japan」がオープンソースソフトウエア(OSS)で開発したアプリだ。

 実は、エムティーアイがCOCOAの開発に参加した2020年8月から、COCOAとOSSアプリの保守開発は完全に分岐した。厚労省が情報発信しなかったためほぼ知られていない。

 それまで誰がCOCOAを保守していたのか。厚労省は「開発と納品はパーソルP&Tに任せていた。受け入れテストは現在も含めて厚労省が担当している」と話す。

 パーソルP&Tへの取材や関係者がSNS(交流サイト)に発信した情報などを総合すると、COCOAのバージョン1.0が公開された2020年6月19日以降も、Covid-19 Radar JapanはOSSアプリをしばらく保守していた。

図 接触確認アプリ「COCOA」の改修と主な対応の経緯
試行期間終了後にバグが頻発
※1:iOS版のリリース日。1.1.1以降はAndroid版のリリースが数日遅いケースが多い
※1:iOS版のリリース日。1.1.1以降はAndroid版のリリースが数日遅いケースが多い
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(画像出所:厚生労働省)
(画像出所:厚生労働省)
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 この間、パーソルP&Tは日本マイクロフト頼みだったようだ。OSSアプリの保守状況の把握やCovid-19 Radar Japanとの連絡、OSSアプリをCOCOAとしてリリースするための開発段階のテストなどを日本マイクロソフトに任せていたという。

 6月から8月までの間にCOCOAを十分に改善する体制を取れていたかは疑問が残る。リリース後にアプリの根幹に関わるバグや開発初期からあったとみられるバグが続出しているからだ。

 例えば厚労省は、公開から2カ月以上たった2020年9月8日に接触判定が大きくばらつく場合があるバグを修正した。さらに同月24日にはプッシュ通知で濃厚接触の可能性を知らせたのにアプリの画面では「濃厚接触はない」と表示するバグも修正している。後者のバグの原因は「通知とアプリの画面で、それぞれ別の接触判定のコードが実装され、判定ロジックが若干異なっていた」(厚労省の新型コロナウイルス対策本部疫学データ班)ためだ。

 厚労省がパーソルP&Tを元請けに選んだ理由は、同社が下請けの日本マイクロソフトやFIXERとともにHER-SYSの開発も担当していたからだ。確かにCOCOAはHER-SYSは機能面で連携するというつながりはある。しかし保守開発の体制を考慮した発注体制を取ることはなおざりにされてきた。

 しかも厚労省はCOCOAの開発体制について、2020年9月の有識者会合まで情報を公開しなかった。そのため、バグ修正に時間を要したことでCovid-19 Radar Japanが非難されるケースもあった。

 OSS開発者たちの善意は、ベンダー選定のプロセスや開発体制を明確にしない厚労省に損なわれたと言ってもいいだろう。IT発注の透明性など原理原則の再構築が求められる。