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RPA調査は自由回答として活用の工夫や手応え、直面した課題などを聞いた。単純作業の削減により社員の心理面の負担も軽くなっている実態が分かった。効果が伸び悩むなどの課題を解決するために、各社は様々な工夫も凝らす。

 調査でRPAの活用策を尋ねたところ、「繰り返し作業や確認作業を任せる」といったPC作業に適用していると回答した企業が目立った。単調なPC作業に広く適用が進んでいる様子がうかがえる。

図 調査の自由回答として寄せられたRPA活用例
図 調査の自由回答として寄せられたRPA活用例
多様な活用策が各社で生まれている
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 富士フイルムホールディングスは「作業量が膨大で、人手では実施が不可能な作業にRPAを導入。以前は考えられなかった成果が得られるようになった」と回答した。キリンホールディングスは人手だと負担が重く1回しかできなかった作業にRPAを適用することで、ソフトロボによって何度でも作業ができるようになった。日本航空も膨大なデータをパソコンで確認する作業にRPAを用いた。従来は確認できる件数が限られていたが、RPAに切り替えてからは全件確認できるようになった。

 繰り返し作業などをRPAで自動化すれば、データ入力のミスや確認漏れが減って、PC作業の質を高められる。さらに社員の心や体の負担も大幅に減らせる。損保ジャパン日本興亜は数秒に1回必ずクリックしないといけないPC作業の自動化が「社員のストレスの解消につながった」という。

 RPAの主な自動化対象はデータのコピー・アンド・ペーストやマウスによるクリック操作など、決まった手順で何度も繰り返すようなPC作業だ。延々と終わりが見えない作業を続けていくことに苦痛を感じたり、肩こりやけんしょう炎といった症状が出たりする恐れがある。RPAによってこれらの作業を自動化することで、オフィスワーカーの心身の負担を軽減できているわけだ。

 社員の心身の負担を減らす策としては「早朝出勤をなくす」や「伝えづらいことを社員の代わりにソフトロボに伝えさせる」などもある。複数の企業が、午前中に必要な資料を作るために社員が始業時間前に出社して取り掛かっていたPC作業をRPAで自動化することで、社員の早朝出勤を無くしたと回答している。

 「伝えづらいことを社員の代わりに伝えさせる」という使い方をしているのが大和ハウス工業だ。出張した社員が申請した経費精算を経理部門が確認する作業にRPAを使っている。「社員が自己申告した費用の金額が、クレジットカードなどの利用金額と異なる」というケースだ。社員に確認を促すメールを、経理担当者の代わりにRPAが送っている。「出張申請の金額が間違っていますよ」。同じ社内とはいえ面と向かって言えば角が立つことがある。それをRPAに任せることで回避しているわけだ。

図 調査で分かった社員のストレス軽減策
図 調査で分かった社員のストレス軽減策
心や体の負担をRPAで減らす
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