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組織や企業風土が老朽化したままではどれだけ高度なIT人材を雇用しても、あるいは第2のIT部門としてDX推進部などを設けても効果は見込めない。デジタルを前提に考える風土を社内に醸成するのがこれからのIT部門の使命だ。

 全社でDXを推進する仕組みを構築した企業の代表例がIHIだ。事業部門が主体的にDXに取り組める環境を作るため、2種類の組織を設置した。

 1つめの組織は全社横断でITを担う「高度情報マネジメント統括本部(高マネ)」だ。2013年にIoT(インターネット・オブ・シングズ)を活用した製品・サービス開発力の強化を目的に発足。2016年にデータ分析を担う旧情報システム部と統合した。

 IHIは「ILIPS(IHI group Life cycle Partner System)」と呼ぶ独自のデータ集約・解析基盤を持つ。自社製品や設備の稼働データを収集し、保全や運用管理に生かす。高マネはILIPSの構築や活用も、取り組みの中心となって推進してきた。

 同社は「エネルギー・資源・環境」「社会基盤・海洋」「産業システム・汎用機械」「航空・宇宙・防衛」と4つの事業領域を持つ。事業にITが欠かせない存在になるにつれ、「IT部門だけでなく、事業主体である各領域それぞれでDXを進めていく必要性が出てきた」(IHIの加藤格高度情報マネジメント統括本部企画管理部部長)。

図 IHIの組織図の概要
図 IHIの組織図の概要
各事業領域のCDOとDX部門がIT部門と連携
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 そこでIHIは2017年、各領域におけるIT投資配分や人材マネジメントのかじ取り役を担う専門人材「CDO(Chief Digital Officer)」を配置した。領域CDOのほか、全社横断の高マネの中にもIHIグループ全体のIT戦略の方針を策定する全社CDOを配置。全員執行役員で構成した。

 2019年4月には各領域CDOの下で、実際にデジタルを使った業務改革や新規サービス開発に取り組むDX部門を全領域に設置した。領域ごとに人選し、それぞれの領域が自律的にデジタル活用を進められる体制を整えた。この事業領域側に設置した領域CDOとDX部門が2つめの組織である。

 各事業領域のCDOとDX部門は高マネと連携しながらデジタル化を進める。高マネは技術的なサポートをしたり、有効な事例を他領域へ展開したりする役割を担う。

ITの「教育係」も担う

 これまでも「第2のIT部門」としてDXチームを設ける動きは多くの企業で見られた。IHIの取り組みがそれらと異なるのは、高マネが各事業領域の中でDX人材を育成する役割も担っている点である。

 具体的には2018年度から各事業領域でDXをけん引するリーダーを育てるための人材育成プログラムを始めた。リーダーとなる受講者の人選は各事業領域に任せたという。

 「製品/サービス開発」「AI/データ分析技術」などのコースを用意。座学、実習、議論を通して各領域のDX課題に対する提案を行う。期間は約3カ月。コース内容は全て内製した。

 「DXに関わるメンバーが活動しやすい風土や環境を作るためには、全社のマインドセットを変える必要がある」(加藤部長)。IHIでは経営を担う幹部層もDX人材の育成プログラムに参加するという。「ITの必要性を再認識する機会となっている」と、加藤部長は手応えを語る。

 2019年度は教育体制をさらに強化する。育成プログラムを受けたメンバーが各組織に戻ったときに「孤軍奮闘」とならないよう、より幅広い人材を育成する予定だ。営業や開発、製造、保守運用など事業メンバーでチームを編成。プロジェクトと連動させて課題解決に取り組む。期間は1年間など長期で設ける計画だ。

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