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「部活」で問題解決力を鍛える

 Kaggleの表情認識コンテスト向けの顔画像データを使い、心理学者ポール・エクマン氏の感情分類に基づくAIモデルをオープンソースの機械学習ライブラリー「TensorFlow」で作成。笑顔の度合いを数値にするデバイスを「Raspberry Pi 3」で試作した--。

 2019年9月に慶応義塾大学SFC研究所データビジネス創造・ラボが開催した「第10回 データビジネス創造コンテスト」で最優秀賞に選ばれたのは、こんな取り組みを発表した富山国際大学付属高等学校メディア・テクノロジー部の学生チームだった。高専・大学・大学院を含む38のチームを抑え、高校生部門賞とのダブル受賞だ。

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富山国際大学付属高等学校のチームがAI技術を操り「最優秀賞」を獲得
富山国際大学付属高等学校のチームがAI技術を操り「最優秀賞」を獲得
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 笑顔やその他の感情をスコアとして表示する「スマートハンドミラー」は、同部所属の女子学生が1年近く温めたテーマだという。ハンドミラー内蔵のWebカメラで撮った顔画像から感情を把握したうえで、過去の同一人物の笑顔と比較して笑顔を促すのに有効なポイントを見いだす。このコンセプトを基に2019年7月にチームを結成し、同年夏に3Dプリンターで機器のケースを自作するなどしてプロトタイプを完成させた。

 富山国際大学付属高等学校メディア・テクノロジー部は、実は同コンテストの常連だ。2016年の第4回、2018年の第7回でも最優秀賞を受賞した。

 同校はICT教育が盛んな高校として知られる。2014年には全校生徒にiPadを持たせた。メディア・テクノロジー部を創部したのもその頃である。創部5年目の現在、部員は40人以上だ。

 橋本知彦顧問は同校の授業で「情報の科学」を受け持つ。授業の中身はデータサイエンスだ。ExcelやPythonなどの使い方を教える。学生ごとに習熟速度が異なるため、学生を少人数グループに分け互いに教え合うようにした。

 2018年度からは滋賀大学データサイエンス学部などのMOOC(大規模公開オンライン講座)を課している。「あえて大学生向け講座に取り組ませている。全員合格とまではいかないが、2019年11月初頭までに修了証の枚数は累計325枚になった」(橋本顧問)。 

 学生は授業でデータ分析の基礎を仕込まれる一方、メディア・テクノロジー部では1年生の間はデータ分析やプログラミングに手をつけない。社会問題から個人の問題まで、データを使って解決したい「問題」を自ら発掘し、問題を深く知ることに専念する。

 2年生以降は、見いだした問題を解くのに必要なデータ分析の手法を自ら選択して習得する。「Udemy」など有償学習サイトの講座を履修する部員もいれば、Kaggleに挑戦する部員もいる。米カリフォルニア大学バークレー校が提供するPythonのオンライン講座を修了した学生もいるという。

 同部の主題はあくまで「問題解決」であり、データ分析はその手段と位置付ける。部活で見いだした社会問題の解決を目指し進路を選ぶ部員も多い。

 ツールの使い方やプログラミングの前に、AI人材の土台となる問題解決力を身に付けさせる。ここがAI時代に日本企業の競争力を高める糸口になりそうだ。

 4年後の2023年、ラグビーW杯の日本代表はフランス大会で初の4強に入り世界に名をとどろかせているかもしれない。同じ頃、日本の若手技術者もAI分野で世界に存在感を示せるか。日本の企業と教育機関のこれからの取り組みが成否を左右するだろう。