今回は、DXを成功させるうえで必要な2つの役割を解説する。「チェンジプラクティショナー(変革実践者)」と「プロジェクトマネジャー」だ。どちらもDXプロジェクトの実務担当が担う役割である。
多くの企業が取り組むデジタルトランスフォーメーション(DX)では、社員1人ひとりの意識を変えることが求められます。その代表的な手法の一つが「チェンジマネジメント」です。本連載では、チェンジマネジメントの考え方に基づいて、DXを成功させる考え方、役割、進め方を説明します。すぐに活用できるモデル(ツール)についても紹介します。
架空の企業である虎ノ門精機でDXリーダーの1人に抜てきされたシステムエンジニア、田中さんのストーリーに沿って説明していきます。
虎ノ門精機DX推進室の田中は、先日開催したDXキックオフミーティングを受けて、DXプロジェクトの詳細計画の作成に取りかかっている。担当するDXプロジェクトはデジタル技術による事業や業務の変革であり、田中はプロジェクトマネジャーに加えて、DXという変革を実践する役割を担う。変革の具体的な施策に悩んでいるところに、虎ノ門精機が契約しているコンサルタントの渡辺が声をかけてきた。
「田中さん、ずいぶん難しい顔をして悩んでいますね」
「ちょうどよいところに来てくれました。DXキックオフミーティングでの鈴木CDOの言葉をどうまとめるか悩んでいたところです。私から改めて、DXの目的や社員への期待を全社にメールで発信しようと思っています」
「田中さんが責任感を持って全社にメッセージを発信しようとしているのは分かりました。ただ先日、鈴木CDOに、様々な手法で社員へ情報発信するようお願いしたのを覚えていますか。変革の実践者としての田中さんが全社メッセージを発信することには少し懸念があります。詳しく説明しましょう」
他のメンバーに役割果たすよう促す
変革には様々な役割のメンバーが関与します。特にチェンジマネジメントを用いて変革を推進していく際には4つの重要な役割があり、このうちスポンサーと管理職マネジャーについては本連載の第2回で説明しました。今回はチェンジプラクティショナー(変革実践者)とプロジェクトマネジャーについて説明します。