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クラウドのシェアは米AWSの約30分の1にとどまり、新たな収益源と見込む「Watson」も期待ほど伸びていない。米IBMは、巨大ゆえに滅びた恐竜の命運をたどるのか。

米IBMのメインフレームは今も収益に大きく貢献している。しかし、需要減の荒波に逆らうことはできず、「氷河期」はゆっくりと忍び寄る。アウトソーシング契約を見直す企業もあり、脱IBMが加速する危うさを秘める。

 メインフレーム市場の縮小がIBMをじわじわと追い込んでいる。脱メインフレームは時代の流れと言えるが、それだけではない。さらに踏み込み、システムの構築や運用を日本IBMに委託する大型のアウトソーシング契約自体を見直す企業もある。

 2018年1月、日本航空(JAL)が進めるPSS(旅客系基幹システム)刷新プロジェクトの「PMO(プロジェクト・マネジメント・オフィス)」から日本IBMのメンバーが姿を消した。

日本IBMとのアウトソーシング契約見直しに関するプレスリリース
日本IBMとのアウトソーシング契約見直しに関するプレスリリース
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 同プロジェクトはIBMのメインフレーム上に構築していたPSSをスペインのアマデウスのクラウドサービスに移管するもの。JALは国内/国際線の予約・発券システムを2017年11月に刷新したのに続く第2フェーズとして、2019年2~3月に国内のチェックインシステムを新システムに切り替える予定だ。第2フェーズが動き出すタイミングで日本IBMはPMOから離脱した。

 PMOはプロジェクトの司令塔といえる存在だ。本来ならJALの業務を熟知する日本IBMの存在は欠かせないはず。プロジェクトの関係者は理由を次のように明かす。「日本IBMは明確な計画があるウォータフォール型の開発は得意だが、混沌とした中を手探りで進むアジャイル型は不慣れ。PMOの役割をうまく果たせなかった」。

 アジャイル開発を採用したプロジェクトの管理に手こずり、JALはIBMとの関係を縮小したことになる。

JALの経営破綻が転機に

 JALにとってIBMは特別な存在だ。JTBなどと並んで、トランザクション処理に特化したIBMのメインフレームOS「TPF」を採用し、数十年にわたって使い続けてきた。

 転機は2010年に訪れた。JALが経営破綻し、会社更生法の適用を申請すると発表したのだ。JALは更生計画案に「ITシステムの刷新」を盛り込んだ。メインフレーム依存の結果、ITの固定費がかさんでいたためだ。JALの関係者は「50年使い続けてきたので、アプリケーションのどこかを手直しすると別のどこかが痛んでしまう。維持・管理性がとても悪かった」と振り返る。

 PSSの抜本的な刷新を成し遂げるには、脱メインフレームだけでなくアプリケーションの開発・保守を自前で手掛ける体制を整備する必要があった。

 JALはIBMへの過度な依存から抜け出すために動き出す。まず日本IBMに過半の株式を譲っていたシステム子会社、JALインフォテックの株式を買い戻すと共に、日本IBMとの戦略的アウトソーシング契約を縮小した。