「IT資格実態調査」は2017年から毎年日経BPの技術系Webサイト「日経クロステック」で実施しており、今回の2020年調査で4回目だ。
今回の調査結果の特徴として、クラウドやAI(人工知能)などDX(デジタルトランスフォーメーション)との関連性が高いIT資格が支持されていることが分かった。DXへの取り組みの一環で関連資格への注目度は高い。一方で、取得意欲の落ち込みも数字にはっきり表れていた。背景には新型コロナ流行に伴う資格試験の中止に加え、生活様式や働き方の変化などがありそうだ。
最初に、回答者が現在保有しているIT資格から見ていこう。回答者が「保有している」というIT資格を全て答えてもらい、10人以上が保有するものをランキングした。
資格保有率は低下傾向
トップは「基本情報技術者」で197人が保有、全回答者345人に占める保有者の割合(保有率)は57.1%である。「応用情報技術者」が145人(同42.0%)で2位、「情報処理安全確保支援士(登録セキスペ)」が78人(同22.6%)で3位と続く。ベスト3の顔ぶれと順位は、2019年に実施した前回調査と同じだった。
ただし、前回調査に比べていずれも資格の保有率が低下した。基本情報技術者の前回保有率は61.8%だったので、4.7ポイント減になる。応用情報技術者は5.9ポイント減、情報処理安全確保支援士(登録セキスペ)は9ポイント減と、落ち込みは小さくない。
保有率の減少幅が最も大きい資格は、「プロジェクトマネージャ」で12.7ポイント減。「PMP(Project Management Professional)」も8.7ポイント減と、プロジェクトマネージャ関連資格の落ち込みが目立つ。
保有率の低下傾向は、資格全体で見て取れる。保有資格の合計数を回答者数で割った「1人当たりの資格保有数」は前回の4.35から今回は3.26に下がった。1人当たり1個強、保有資格が減った計算だ。
保有率が最も上がった資格は「G検定(JDLA Deep Learning for GENERAL)」で5.3ポイント増だった。保有資格の順位を前回の28位から13位に上げている。G検定と「E資格(JDLA Deep Learning for ENGINEER)」は日本ディープラーニング協会のAI関連のIT資格で、前回調査から選択肢に加えた。DXへの機運が高まる中、データ分析やAI活用などのスキルを磨くエンジニアが増えているのが数字にも表れた格好だ。
オラクル データベース分野が後退
IT資格は日々の実務に役立つほか、昇進や転職などにも威力を発揮する。数多くあるIT資格の中で今、エンジニアはどれが保有する価値が高い「いる資格」と感じているのか。資格保有者に評価してもらった。
評価ポイントは「実務に役立った」「昇進・昇格に役立った」「転職に役立った」「昇給や報奨金を得た」の4項目。合計(400点満点)でトップ20の資格をランキングした。
資格保有者から最も保有効果が高いと評価されたのは「PMP(Project Management Professional)」で、合計点は172点だった。前回調査に引き続いて「昇進・昇格に役立った」が全資格中トップであり、この項目では定評があるといえる。
第2位は153点を獲得した「シスコルーティング&スイッチング分野(CCNA/CCNP/CCIE)」。「実務に役立った」「転職に役立った」で全資格中の最高点をマーク、前回調査の第5位から順位を上げた。
順位の変動に目を向けると、「技術士(情報工学部門)」(10位→3位)、「ITストラテジスト」(13位→5位)、「システムアーキテクト」(12位→5位)、「ITサービスマネージャ」(14位→7位)が、それぞれ前回調査から大きく順位を上げた。ITストラテジストは前回調査において「取得したいIT資格」で2位を獲得している。今回「効果を得られた資格」のランキングで順位を8つ上げ躍進したことは、回答者が保有効果を実感した証左だろう。ITサービスマネージャは、「昇給や報奨金を得た」で全資格中の最高点だった。
一方、前回6位から2桁以上順位を落としたのが、17位の「オラクル データベース分野(ORACLE MASTER、認定MySQLなど)」だ。前回調査では「実務に役立った」でトップだったが、その座を他資格に譲った。「データベーススペシャリスト」(9位)も前回調査からランクダウンしている。
クラウド活用や自律化機能の充実などにより、データベース運用の作業負荷は減る傾向にある。それに伴い、データベース管理者の仕事が従来の運用作業から、データ活用の推進へと変化しつつある。データベース関連資格の「役立ち度」にも影響がありそうだ。