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企業活動に欠かせないインターネットについては、情報漏洩や使い勝手など改善すべき課題が山積している。解決に向け、米グーグルや日米欧の組織が動き出した。

セキュリティー面にとどまらず、利用者がWebなどのITサービスを安全に使えるようにする信頼性確保の取り組み全体を意味する「トラスト」。日本の企業やセキュリティ研究者も確保に向けて動き出した。日米欧で相互運用できる枠組みを構築する試みも始まった。Webだけでなく、ITサービスの将来に影響を与える可能性がある。

 デジタルトラスト推進本部。NECが2018年10月に設立した新組織の名称だ。同社の顧客がバイオメトリクス(生体認証)やAI(人工知能)を活用する際に、プライバシーなど人権を守るための戦略策定を担う。若目田光生デジタルトラスト推進本部主席主幹は「カメラの機能そのものを認証する仕組みなどにより、広く信頼を得られるようにしていく」と意気込む。

 顔認証をはじめとするバイオメトリクスでデータの使い方を誤ると、個人のプライバシーに重大な影響を与える恐れがある。新組織は技術だけでなく法制度や倫理に詳しい専門要員を集めて、外部有識者会議を設ける。

セキュリティーなどの上位概念

 グーグルやモジラに加え、NECのようにトラスト確保に臨む企業が目立ってきた。データの機密性確保といった情報セキュリティーの面にとどまらず、利用者から信頼を得るための取り組みが中心となる。

 ITの利用者の視点からトラストのあり方を研究している津田塾大学の村山優子教授は「トラストは情報セキュリティーやプライバシー保護の上位に位置付けられる概念。社会的な不確実性など何らかのリスクがある環境で必要になる」と指摘する。狭義のWebに限らず、ネットでデータをやり取りする全てが対象になる可能性がある。

図 トラストの構成要素
図 トラストの構成要素
セキュリティーやプライバシー保護の上位概念に当たる(出所:村山優子・津田塾大学教授の資料を基に日経コンピュータ作成)
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 これまでトラストの必要性は十分理解されていなかった。各国で行政サービスのデジタル化を提言している業界団体の米BSA(ザ・ソフトウエア・アライアンス)のジャレット・ラグランドアジア太平洋政策担当シニア・ディレクターは「セキュリティーは客観的事実を扱うのに対し、トラストは人間の心理にも関わる」と説明する。例えば、セキュリティーが盤石でも利用者が不安に感じる場面もありえる。

 ITの利用者やサービスの提供者の認証に加え、やり取りするデータが本物であると認証する技術基盤も必要だ。「認証を伴わずにデータを暗号化するだけでは、相手が他人のなりすましかどうか分からない。つまりセキュリティーだけではトラストは成り立たない」とデジサート・ジャパンの平岩氏は指摘する。