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国内でコンテナを本格的に導入する機運が急速に高まっている。これまでネット企業が先行していたが、ここ1~2年で大手銀行なども利用し始めた。デジタルトランスフォーメーション(DX)に必須の基盤として普及期に突入しつつある。

 「次世代の共通基盤としてコンテナに対応していく必要があると判断して2018年末ごろから導入を始め、現在は行内全体で利用を推進している」。三井住友銀行の増尾敦システム統括部副部長は同行の方針をこう説明する。

 三井住友銀行は、システム開発を手掛けるグループ会社の日本総合研究所と共に、行内共通のコンテナ基盤の整備を進めている。プライベートクラウドに仮想CPUコア数で500個以上のコンテナ基盤を構築した他、パブリッククラウドのコンテナサービスの活用も始めた。

本番導入が1年で5ポイント上昇

 コンテナは軽量な仮想環境の技術だ。従来の仮想サーバーと違って個々にOSを動作させるのではなく、1台の物理サーバーあるいは仮想サーバーの上で、複数のコンテナがOSを共有しながら動作する。コンテナ同士を独立させるために、OSのプロセスを名前空間(ネームスペース)という技術によって分離するが、個々のコンテナは独立したOSを持たない。そのため起動が速く、条件によっては数秒で立ち上がる。CPUやメモリーのリソースも、仮想サーバーより少なくて済む。

 コンテナ活用が先行した欧米に続いて日本でも、本格導入の機運が急速に高まっている。

 IDC Japanの国内企業を対象にした調査結果によると、2019年は「(コンテナを)本番環境で導入している」との回答は9.2%だったが、2020年は5ポイント上昇し14.2%に上った。「導入構築/テスト/検証段階」「導入する計画/検討がある」「情報収集や勉強をしている」との回答も合算すると66.2%に達する。今や3分の2の企業がコンテナを導入済みか、前向きに取り組んでいる。普及期に突入しつつある段階だ。

図 IDC Japanによるコンテナの導入状況に関するユーザー調査の結果
図 IDC Japanによるコンテナの導入状況に関するユーザー調査の結果
導入機運が急上昇
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 実際、コンテナを本格的に導入した企業は三井住友銀行だけではない。リクルートのプロダクト開発統括室エンジニアリング室に所属する藤原涼馬氏は、リクルートグループのIT基盤の方針について「パブリッククラウドを使って新規のネットサービスを提供する場合は原則コンテナを用いる」と説明する。同グループは2016年ごろから一部の小規模なシステムでコンテナを使い始め、2017~18年には大規模なシステムにも適用範囲を広げた。現在はグループ内でノウハウを共有してコンテナ活用を加速させている。