ノーコード/ローコード開発ツールの台頭は時代の必然だ。開発生産性を高め、業務部門のニーズを満たす手法が、今こそ求められている。7割が導入に前向きというユーザー企業の意向を背景に、ベンダーも製品拡充を急ぐ。
「グリーン車の蛍光灯の一部が消えているので交換してほしい」──。東京・品川の大井町駅のほど近く、JR東日本の東京総合車両センターには首都圏の車両が整備・点検のためにひっきりなしに運び込まれる。この日も車両1編成が運び込まれた。
点検作業の担当者が交換対象の蛍光灯の近くに到着すると、携行するタブレット端末を操作し「故障情報連絡アプリ」を起動。アプリから作業指示の内容を確認し、手早く交換を終えた。
このアプリは企画科生産技術Gに所属する生方勇士氏が、車両の整備・点検の担当者と一体となって開発した。2021年4月に開発を始め、約2週間でほぼ完成。訓練を含めても、3カ月で運用を開始できた。
「Visual Basicを触ったことはあるけれど、業務アプリの開発経験はほぼゼロ」。そんな生方氏が実用的なアプリを短期間で開発できたのは、業務の最前線で働く作業担当者と二人三脚で、高度なプログラミングのスキルが不要なツールを使ったからだ。
機能改良や環境変化で普及期に
同社が活用したのは「ノーコード/ローコード」と呼ばれるシステム開発ツールだ。その名の通り、プログラムのソースコードを極力記述せずにシステムを開発できる。ホームページ作成ツールのような要領で部品を組み合わせて画面を設計し、業務ソフトを開発するものが多い。
ノーコード/ローコード開発の技術やツールが普及期に入った。JR東日本が使ったのは米マイクロソフトのローコード開発ツール「Power Apps」。他にも日本航空(JAL)や三菱食品といった大手企業から中小企業まで、多くの企業が使い始めている。
IDC Japanによれば「導入済み」または「導入中」の日本企業が急増しており、21年9月に50.5%に達し、「計画中・検討中」も含めれば7割を超えた。米ガートナーによれば21年のツール市場は57億5000万ドル(約6500億円)と前期比約3割増の見込みだ。