AI Drivenを実現するには、経営層と現場の担当者が一致団結しなければならない。その上で、新たな業務フローの整備や人材の育成、評価・報酬などに取り組む必要がある。AI活用推進の仕組みづくりでは、本社組織から独立した「出島組織」の構築が有効だ。
AI(人工知能)の導入プロジェクトを成功に導くには「AI Driven」の考え方が欠かせません。AI Drivenは、ビジネス上の意思決定にAIを活用する段階を経て、ビジネスモデル変革に進めます。
AI Drivenで注力すべき、組織とビジネスに関する5つの領域を紹介する本連載。今回は、AI Drivenを成功させるために必要となる「経営層・管理職層の姿勢」をテーマに解説します。
AI活用推進に重要な3つの要素
最近のニュースを見ていると、企業におけるAIの取り組みが活発化していると感じます。他社に遅れないよう、取り組みを強化したい企業も多いでしょう。
そのような中、すでに先進的な取り組みを実現している企業も存在します。筆者が関わるある大手金融企業ではグループ全体でAI活用を促進しており、すでにAI Drivenを実現していると言っても過言ではない状態です。そんな同社の取り組みを参考にしながら、AI活用推進において特に重要だと考える3つの要素を紹介します。
1つは、経営層と現場の担当者が一致団結で取り組むことです。同社の場合、現場に丸投げするのではなく、経営層も現場と一緒に汗をかき、先頭に立ってAI導入を推進しています。
もう1つは、推進組織の構築です。経営層が号令をかけるだけでは取り組みの継続が難しいため、主要グループ企業ごとにAI活用を推進する組織を構築し、現場で自走できる体制を整備しています。
最後は、「市民データサイエンティスト」の育成です。AI活用を推進するにはデータサイエンティストが必要ですが、自社で育成するには時間がかかります。加えて、データサイエンティストの需要が高まり各社が採用を強化している今日では、外部からの採用も難しいのが現状です。
そこで同社では、プログラミングスキルを補完するツールの利用と、座学・OJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)の両輪による技術移管により、AI活用を推進する市民データサイエンティストを社内で育成し、データサイエンティストの空席を補完しています。