PR

これを押さえておけば成果を出せる。知らないと痛い目にあう――。先進企業やIT企業への徹底取材を通じて、RPA導入の勘所を「格言」としてまとめた。早速見てみよう。

 RPAは導入して終わりではなく、現場で使い始めてからが本番である。現場の担当者を味方に付けて、導入成果を引き出すためにはどうすればいいか。

業務も見直せば効果1000倍

 人手で進めていたPC作業をRPAでそのまま自動化するのに使うだけでも、現場の効率化に役立つ。さらに踏み込んで「PC作業を含めた既存業務を見直してから適用することで、より大きな効率化が図れる」(富士ゼロックスの内藤恵一執行役員全社改革室長)。

 同社は2017年10月から社内業務にRPAを適用し、150体のロボで年間4万時間分の業務削減を進めてきた。このうち業務を見直してRPAを導入したケースの1つが、研究開発部門における大量データの処理だ。同社は手作業でこなしていた一連の業務手順を洗い出し、無駄な作業手順を省くなど業務の見直しを実施した。そのうえでRPAを導入したところ、「単位時間当たりに処理できるデータ量を従来の1000倍に引き上げることができた」(内藤執行役員)。手作業をそのまま自動化していたら、ここまでの効果は出なかったとみる。

BPRにつなげた三菱UFJ銀

 詳細は明らかでないが、実験結果や研究データの記録から図表の作成・加工まで、研究者の業務も見直し、研究者は日中、実験と研究データの記録に専念。データの加工はRPAが夜間に担うように変えたとみられる。

 一連の取り組みは業務プロセスの可視化と改善を担うBPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)の担当チームと、RPA導入を支援するITチームが連携して進めている。

 富士ゼロックスはRPA導入の前提としてBPRを実施したが、RPAが広がった結果としてBPRに着手した企業もある。三菱UFJ銀行だ。2014年にRPAの導入を始め、現在は約1000体のソフトロボを稼働させている。社内業務のデジタル化を担当する行員がRPAの導入を担当。既存業務を可視化してRPAを導入したうえで、業務担当者に細かな改善提案をしてきた。

 可視化と改善提案を繰り返してきたところ、RPA導入を担当する行員は「抜本的なBPRに向けた業務プロセス分析や改善策の検討に関するスキルを身に付けた」(西田良映デジタル企画部上席調査役)。結果としてPC作業にとどまらない広い範囲の業務を改善ができるようになったという。三菱UFJ銀行は2017年秋から数十のBPRプロジェクトを推進中だ。

社員の働き方も広げろ

 「ソフトロボでPC作業を自動化した分、他の仕事に着手できる時間を増やせた」。RPAを使いこなす企業からはこんな声が聞こえてくる。しかし得られるメリットはそれだけにとどまらない。「RPAをうまく活用すれば、社員の働き方そのものをこれまで以上に広げられる」と住友林業グループでRPAの普及に携わる住友林業情報システムの成田裕一ICTビジネスサービス部シニアマネージャーは説明する。

 RPAを活用して同社で生まれた新しい職種の1つが、午前中だけ働く短時間勤務だ。それまで1日がかりだったPC作業の一部をソフトロボに肩代わりさせたことで、スタッフは午前中だけ出社すれば済むようにした。

 RPAを適用した業務は住友林業グループ各社の住宅関連Webサイトからのデータ収集と社内システムへの入力、資料送付の手続き処理だ。対象は一般消費者が各サイトに資料請求のために登録したデータである。約20件のWebサイトから1回当たり最大数百件のデータを収集する必要があり、これまで担当者1人が1日がかりでこなしていた。

 サイトからのデータ収集作業をソフトロボに任せ、夜間に自動実行させることにした。スタッフは翌朝、社内システムへの入力と資料送付の手続き処理を始められるため、午前中いっぱいで仕事を終えて、午後の時間をプライベートに当てられるようになった。「育児などの理由で午前中しか働けないスタッフにも活躍してもらえる」(成田シニアマネージャー)。

ロボを相棒に自身は在宅勤務

 就業時間だけでなく就業場所の自由度も高まった。ソフトロボは一般の従業員が使える社内システムやデータなら全てアクセスできる。社内ネットワークでしか動けないが、処理結果をメールで送ることも可能だ。

 こうしたRPAの特徴と限界を踏まえ、社内でしかできないデータ処理をソフトロボに任せて自身は在宅勤務で企画書作りなどに専念する社員が増えているという。「RPAを自身の働き方改革に生かすようになってきている」と成田シニアマネージャーは明かす。