「トップダウンで交渉が進んだからこそ、短期間で基本合意までこぎ着けられた」。「Tポイント」を手掛けるカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)の関係者は三井住友フィナンシャルグループ(FG)との資本業務提携の舞台裏をこう明かす。この関係者によると、CCCの創業者である増田宗昭社長と三井住友FGの太田純社長が意気投合し、約2カ月で基本合意に至ったという。両社は2022年12月末までの最終合意を目指している。
提携の中身はこうだ。まずCCC傘下でTポイント事業を展開するCCCMKホールディングス(HD)に三井住友FG側(以下、グループを総称してSMBCグループ)が出資する。出資比率はCCCが6割、SMBCグループが4割を目安に調整している。
さらに2024年春をめどに、CCCのTポイントとSMBCグループが手掛ける「Vポイント」を統合する。両ポイントを統合し、新たなポイントブランドを創出する計画だ。三井住友カードの佐々木丈也常務執行役員は「既存のブランドの強みや顧客への浸透を踏まえつつ、新たな名称を検討中」と語る。ポイントと決済を組み合わせたモバイル決済サービスなども検討している。
ファミマの出資引き揚げが発端
SMBCグループとのスピード決着の理由を探ると、CCCの苦境が垣間見える。ここ数年でTポイント事業に出資する外部パートナーを失い、新たな出資者の獲得が急務だった。
パートナー離脱の引き金を引いたのは、ファミリーマートだった。もともと、コンビニエンスストア業界でTポイントに加盟していたのはローソンだった。しかし、三菱商事の主導で独自の共通ポイント(のちの「Ponta」)を立ち上げることになり、同社グループに属するローソンが2007年3月にTポイントを離脱。そこで、CCCの増田社長が駆け込んだのがファミマだった。こうした経緯もあり、CCCにとって、ファミマは一加盟企業にとどまらない「特別な存在」であり続けた。
それを裏付けるように、ファミマは2015年、約100億円を投じて、Tポイント運営会社であるTポイント・ジャパン(TPJ、現CCCMKHD)の約15%の株式を取得していた。しかし、ファミマの親会社である伊藤忠商事の意向もあり、TPJの保有株式を全てCCC側に売却。出資引き揚げに歩調を合わせる形で、2019年11月に従来のTポイントに加えて、楽天(現楽天グループ)の「楽天スーパーポイント(現楽天ポイント)」とNTTドコモの「dポイント」も導入し、マルチポイントに移行した。
ファミマに続いたのがZホールディングス(HD)とソフトバンクだ。2社はTPJに出資していたが、この資本関係を2022年3月末に解消。同じタイミングでZHD傘下のヤフーとソフトバンクは、Tポイントとの連携も一部サービスを除いて終了していた。ヤフーとCCCは2012年に戦略的資本業務提携で基本合意しており、両社の蜜月関係は約10年で終わりを迎えたことになる。
ファミマ、ZHD、ソフトバンクが抜けたことで、TPJに出資する外部パートナーはいなくなった。