全2083文字

 第一生命は2020年9月までにクラウドを活用して基幹システムを刷新した。数十年単位の長期にわたる契約データを管理する従来のメインフレームと、最新のクラウドを組み合わせた構成を採用。顧客の日常生活における行動と健康状態の因果関係を分析しやすくしたほか、健康や食生活の管理に関する外部データとの連携を取りやすくするなどして、DXを進める環境を整えた。同社はこれを「ホームクラウド構想」と呼ぶ。

表 第一生命保険のDXに関する取り組み
コロナ禍でデジタル変革を加速
表 第一生命保険のDXに関する取り組み
[画像のクリックで拡大表示]

 クラウドは米マイクロソフトの「Microsoft Azure」を使う。クラウド上に顧客情報や契約情報のデータ分析システムなどを構築し、他のクラウドサービスと連携するためのAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)を用意した。

 システム刷新の背景には生命保険事業の領域拡大がある。健康寿命が延び、医療費の抑制が求められる中、生命保険事業はもしもの時の保障の役割に加え、顧客の健康データの分析に基づく予防・早期発見の役割が重視され始めているという。顧客ニーズの多様化にも応えていく。終身保険や3大疾病に備える保険だけでなく、例えば2018年12月には「認知症保険」、2019年9月から「就業不能保険」の提供を始めた。

システム投資額は30億円

 基幹系システム刷新に関する投資額は約30億円。主にインフラ整備とデータ連携などの共通機能の開発に費やした。「新商品用システムなどに予算を使えるよう、インフラ部分はできるだけコストを抑えるよう工夫した」と太田俊規ITビジネスプロセス企画部フェローは話す。

基幹システム刷新を担当した第一生命保険の太田俊規ITビジネスプロセス企画部フェロー
基幹システム刷新を担当した第一生命保険の太田俊規ITビジネスプロセス企画部フェロー
[画像のクリックで拡大表示]

 コストを抑える工夫はIT部門の腕の見せどころともいえる。手間もコストも大幅にかかるシステムの「総取り換え」ではなく、顧客データを管理する従来のメインフレームを生かしながら、そのフロントエンドにクラウドを配置する構成を採った。「メインフレームに残すべきものとクラウド上に構築すべきものを、社内で徹底的に議論した」と太田フェローは語る。