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 わずか5%――。コロナ禍にあっても教員と児童・生徒がやり取りできる「同時双方向型」のオンライン指導をすぐに提供できた自治体の割合だ。

 文部科学省の調査によると、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、2020年4月16日時点で公立小中高校が臨時休校を実施中または実施予定の1213自治体のうち、同時双方向型のオンライン指導を通じた家庭学習を提供すると回答した自治体は60自治体(5%)にとどまった。

 世界的に見ても、日本の教育におけるICT活用度合いは極めて低い。経済協力開発機構(OECD)が2019年12月に発表した2018年「生徒の学習到達度調査(PISA2018)」によると、「1週間のうち、教室の授業でデジタル機器を使用する時間」は国語、数学、理科において加盟国中最下位だった。学校外で「コンピュータを使って宿題をする」頻度についても「全くかほとんどない」が78.8%でこちらも最下位だ。

図 OECD(経済協力開発機構)の「生徒の学習到達度調査2018年調査(PISA2018)」による学校内外でのICTの利用状況
図 OECD(経済協力開発機構)の「生徒の学習到達度調査2018年調査(PISA2018)」による学校内外でのICTの利用状況
ICTの利用で日本は最下位(出所:国立教育政策研究所の資料を基に日経コンピュータ作成)
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 「他分野と比べ、学校のICT化は著しく遅れている」と東北大学大学院の堀田龍也情報科学研究科教授は指摘する。多くの教員や保護者も含め、「学校はそういうものだと思い込んできた。自分たちが通った(ITが生活に浸透していなかった)昭和の頃と同じイメージで学校を捉えていた」(同)。こうした状況を一気に変えようと政府が進めるのが「GIGAスクール構想」だ。小中学生に1人1台の学習用端末と、高校も含めた高速大容量の通信ネットワークを整備する。

人材のミスマッチに危機感

 だが「1人1台」の環境を整備するだけでは、世界に通用する人材の育成にはつながらない。ICTを使って何を学ぶか、その中身こそが重要になる。

 経済団体も1人1台の先を見据えた教育改革の検討に動き出した。2020年9月18日、経団連は「EdTech推進に向けた新内閣への緊急提言」を発表した。「人材の需要と供給が一致していない」。取りまとめた小宮山利恵子スタディサプリ教育AI研究所長はこう話す。経団連が問題視するのは、これまでの日本の教育システムでは「現代社会に必要な能力が十分に養えない」(小宮山所長)点だ。現代社会は高度に情報化が進み、人工知能(AI)の急速な普及に代表されるようにテクノロジーの進歩はかつてないほど早い。こうした先が見通しにくい現代社会では、課題を自ら発見して解決する能力、プログラミング的な思考、情報リテラシー、ITスキル、コミュニケーション能力などが新たに必要になるという。