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「GIGAスクール構想」は学校を、そして学びをどう変えるのか。先行事例から浮かび上がったのは、教員主体から児童・生徒主体への学びの転換だ。「1人1台」が実現する新たな学校の姿を明らかにする。

 「日本の教育はイノベーションのジレンマに陥っている」。鈴木寛元文部科学副大臣は危機感を募らせる。優良企業が既存の製品やサービスをその延長線上で改良し続けた結果、イノベーションに乗り遅れる。日本の教育はまさにそうなっているというのだ。「20世紀型教育に成功したが、その影でデジタル社会に適応した教育への対応が遅れてしまった」(鈴木氏)。

 鈴木氏が文科副大臣だった2010年に文部科学省は「教育の情報化ビジョン(骨子)」を発表した。そこには「1人1台の情報端末による学習を可能とするため、超高速の校内無線LAN環境構築が必要」と、GIGAスクール構想と同様の内容が盛り込まれていた。

 それにもかかわらずこの10年、なぜ学校のデジタル化は進まなかったのか。理由の1つに学校のICT環境整備に必要な経費を地方交付税措置としてきた点がある。地方交付税の使途は地方公共団体の自主的な判断に任されている。教育の情報化に必要な経費として交付されるものの、それ以外の使途にも充てられる。「一部を除いて教育現場は将来を見据えたICT環境の整備をしてこなかった。現場主導のマイナス面が露呈した」(鈴木氏)。

写真 1人1台の端末を使った授業の様子
1人1台で授業が変わる(上はつくば市立みどりの学園義務教育学校、下はドルトン東京学園中等部の例)
写真 1人1台の端末を使った授業の様子
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国主導で端末とネットを整備

 「学校ICT環境の整備状況に自治体間でばらつきが見られる中、国としてもその是正に努めつつ、個人情報の取り扱いに適切に配慮した上で、教育データのデジタル化・標準化を進める」。政府が2019年6月に発表した「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)2019」にはこう書かれていた。

 「骨太の方針を発表した頃は、1人1台端末やネットワーク環境の整備を国庫で負担しようとの考えに向かって動いていた」。当時、文科省でGIGAスクール構想実現に尽力した矢野和彦文化庁次長は振り返る。国の補助金はできる限り地方の一般財源にするという流れとは逆行するが、「1人1台端末と高速通信ネットワーク」を実現するには地方任せではなく、国が主導するしかないと考えたのだ。

 2019年8月、2020年度概算要求で文科省は「GIGAスクールネットワーク構想」として375億円を予算要求した。さらに経済産業省の支援も受けて、2019年度補正予算でGIGAスクール構想の実現に2318億円を要求。本格的に学校DXに向けて動き出した。