GIGAスクール構想によるICT環境の整備はDXのきっかけにすぎない。テクノロジーを活用してAI時代に対応する人材をどう育成するか。教育改革で先行する5校の取り組みを紹介する。
GIGAスクール構想は学校DXの入り口――。「1人1台端末により教育現場でICTを活用する機会、量が増える。量が増えることで教育の質が変わる。つまり教育のDXが起こる」と国際大学グローバル・コミュニケーション・センターの豊福晋平准教授は話す。
では政府が描く学校DXはどのようなものか。2017年12月から2018年6月にかけて文部科学省は「Society 5.0に向けた人材育成に係る大臣懇談会」を開催。人工知能(AI)が発達するSociety 5.0の時代の人材像や学びのあり方を検討した。当時、座長代理を務めた鈴木寛元文部科学副大臣によると学校DXのポイントは2つある。
1つは個々人の学習において「公正に個別最適化された学び」が進むことだ。個人の学習履歴や学習到達度といった学習ログを蓄積する。本人が自分の学習に役立てるのはもちろん、教員が個々の児童・生徒の学習ログを参照できるようにする。1人ひとりに最適化した学習支援が可能になる。
もう1つは大学、企業、地域社会など様々な人たちとのコラボレーションによる学びだ。大臣懇談会の報告書ではAIにない人間の強みを「想定外や板挟みと向き合い調整する力」などと定義。そうした力をつけるため、学校には実体験や他者との対話・協働をはじめ多様な学習活動の機会を提供する役割を求める。こうした活動にも様々なICTツールが必須となる。
2017~2018年に改訂した学習指導要領と歩調を合わせるものだ。児童・生徒がICTを活用して主体的に学ぶことを目指す。教員の役割は「コーチング(問いや対話で相手を深い思考に誘い、新たな気付きを得る手助けをすること)の比率が高まる」と東北大学大学院の堀田龍也教授は言う。
学びの変化には、教育とテクノロジーを組み合わせた「EdTech(エドテック)」が果たす役割も大きい。経済産業省の「未来の教室」実証事業では、企業と学校を連携させてEdTech活用事例を生み出す。「1人1台端末と高速通信ネットを実現したらどんな学びができるのかというモデルの創出を2018年度から始めた」(経産省の浅野大介サービス政策課長・教育産業室長)。