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全ては目標設定に

 新規事業の創出に、有力スタートアップへの出資や買収を通じた事業拡大、新規株式公開(IPO)によるスタートアップ自身の成長――。オープンイノベーションの理想を成すのは容易ではない。成功と失敗の分かれ道にある幾つものポイントを1つひとつクリアしていかなければならないからだ。

 「明確な目標やゴールの設定が重要。これなしに成功はあり得ない」。大企業とスタートアップのマッチングによるオープンイノベーション支援を手掛ける、Creww(クルー)の伊地知天社長は成功の勘所をこう断言する。同社は冒頭のBionicMとシナノケンシが出会った関東経済産業局による共創促進事業の実務を担った。2012年の設立以来、大企業とスタートアップによる共創のプログラムを300回以上開催。国内6000社のスタートアップがCrewwに登録している。

 目標設定を最重要視するのは、活動全般にわたって関係者の足並みをそろえる指針になるからだ。PoCを実施するにも目標が定まっていなければ成否を判断できず「PoC疲れ」に終わる。目標が曖昧なままだと、「徐々にすれ違いが増えて互いの距離が離れてしまう」(伊地知社長)。

 ただ必ずしも最初から大きな目標を立てる必要はない。「大企業にとって小粒でもいいから初年度に協業実績を3つつくる、といった目標でも十分だ」(同)。成功体験を積めば次の成功につながる糧になる。オープンイノベーションは継続的な活動だけに、フルタイムで取り組む専属部署をつくって人事評価制度を整えるといったことも、立ち上げ期には目標の1つになり得る。

 他にもたくさんのポイントがある。大企業側の経営陣が明確なコミットメント(約束、関与)を示して担当者にしかるべき権限や予算を与える、スタートアップの技術や知的財産を尊重しつつ新規事業につなげるフェアな契約を結ぶ、といったものだ。いずれもクリアするのは容易ではない。

 「3割であっても、バッターボックスに立ち続けなければチャンスは生まれない」。FINOLABの柴田チーフ・コミュニティー・オフィサーはこう訴える。幸せな出会いを果たし協業の果実を得られるか、すれ違いやトラブルの果てに破局するか。有望スタートアップの成功例を紹介した後で、成否を分ける勘所を見ていこう。

図 オープンイノベーションの成否を分けるポイント
図 オープンイノベーションの成否を分けるポイント
理想実現への分かれ目とは(イラスト:Getty Images)
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