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オープンイノベーション後進国の日本でも、成功を収めたスタートアップは存在する。いずれも他社の追随を許さない唯一無二のノウハウや技術、サービスを持っている。自らの強みをさらに磨く手段として大企業との協業を活用する。

 日本に1万5000社あるとされるスタートアップ。大企業とのオープンイノベーションがうまくいくのは一握りだ。その中でも大企業から引く手あまたの5社を紹介しよう。

ダイキンと知財でも協業

 フェアリーデバイセズは音声認識に特化したAI(人工知能)をソフトウエアからハードウエアまで自社開発する、国内では珍しいスタートアップだ。2021年10月には、2019年に始めたダイキン工業との協業を知的財産の領域にまで広げると発表した。

 フェアリーデバイセズは藤野真人CEO(最高経営責任者)/CTO(最高技術責任者)が東京大学発のスタートアップとして2007年に創業した。強みは音声認識や話者識別などの各種AIエンジンや、これらをクラウドで提供するAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)、騒音下で認識率を高める信号処理、組み込みソフト開発、ハードの設計に至るまでの一式を自社で開発している点だ。

 ダイキン工業との協業では当初、フェアリーデバイセズの首かけ型ウエアラブル機器「THINKLET」とダイキン工業の業務支援アプリを組み合わせた業務支援システムを開発した。THINKLETで撮影した現場映像を基に、熟練技術者が遠隔地にいる作業者にリアルタイムで助言・指示したり、その音声を文字化して作業報告書の作成に役立てたりするシステムである。

 ダイキン工業が今後、同システムを世界で展開するうえで、作業者の熟練度や作業環境の違いに応じた運用方法や固有機能が必要になる。知財分野の協業では、こうした各地の運用や機能の実装を進めるなかで得られる技術やノウハウを共同で特許にする。

 フェアリーデバイセズは自社の強みを生かして、製造業を中心とする現場のDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進することを目指している。世界各地で空調機器を展開するダイキン工業と組めば、現場DXの高度化に向けた知財を世界規模で生み出せると踏んだわけだ。

図 フェアリーデバイセズとダイキン工業との協業
図 フェアリーデバイセズとダイキン工業との協業
知的財産ポートフォリオを共同で創出(出所:ダイキン工業とフェアリーデバイセズの資料を基に日経コンピュータ作成、写真・画像提供:フェアリーデバイセズ)
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フェアリーデバイセズの藤野真人CEO/CTO
フェアリーデバイセズの藤野真人CEO/CTO
(写真提供:フェアリーデバイセズ)
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 将来的には共同で権利化した知財を両社以外の企業と共有する仕組みも構築する。「オープンイノベーションの輪を広げ、様々な業界で現場のDXを推進したい」。フェアリーデバイセズの久池井淳執行役員COO(最高執行責任者)はこう意気込む。