大企業から納得できない扱いを受けたスタートアップの8割が泣き寝入りしている。そんななか「特許」を武器に大企業と戦うスタートアップもいる。両者が対等な関係を構築できるよう、政府もモデル契約書を出すなど支援に乗り出した。
2021年5月、知的財産高等裁判所(知財高裁)が注目の判決を下した。ファーストリテイリング(以下ファストリ)が運営する「ユニクロ」や「GU」に設置されているセルフレジについて、大阪市のスタートアップ、アスタリスクが持つ特許の有効性が争われていた件で、アスタリスクの特許を有効と判断し、ファストリ側の主張を退けた。
問題となったセルフレジは、くぼみの中に商品や買い物カゴを入れるだけで商品に付いたRFID(無線自動識別)タグを読み取る機能を備える。アスタリスクは同セルフレジの特許を2017年5月に出願。2019年1月に登録された。合わせて親特許を含め、関連技術を分割して特許を複数取得した。
セルフレジの特許を巡り、両陣営は激しい争いを繰り広げてきた。ファストリ側は2019年5月に同特許の無効審判を請求。これに対しアスタリスクは同年9月にファストリに対する特許権侵害行為の差し止め仮処分を東京地方裁判所に申し立てた。
2020年8月、ファストリが提起した無効審判について、特許庁はファストリ側の無効請求を部分的に認めつつ、セルフレジに使う2種類の特殊素材など特許の一部は有効だと判断した。双方が不服として知財高裁で争っていたが、冒頭の通り、2021年5月に知財高裁がアスタリスクの親特許を認めた。
ファストリはこれを不服として同年6月に最高裁判所に上告。同社は親特許や分割特許について新たな事実を基に無効審判を請求している。裁判を進める一方、2021年11月26日現在、両者の間で和解協議が進行中である。