既存アプリの移行では、リコンパイルや文字コードなどさまざまな留意点がある。商用UNIXからは、Linuxへの移行やクラウドネイティブでの作り替えが選択肢だ。データ移行では量に注意すると同時に、DBからの移行手法を押さえておく必要がある。
今回はオンプレミス環境にある既存システムのアプリケーションを新たな基盤に移行する際の留意点と、オンプレミスにある大容量のデータやデータベース(DB)を活用する方法について解説する。
DX(デジラルトランスフォーメーション)の推進に適した基盤はパブリッククラウドだが、システム上の制約によりオンプレミスに残るシステムもある。結果的にハイブリッドクラウド構成になるのが一般的だ。
移行対象として、少し前のバージョンのLinuxやWindowsのサーバーであればクラウドベンダーが提供する仮想サーバー用の移行ツールを使って容易に移行できる。ただし、メインフレームやベンダー提供の商用UNIXサーバー、これらのOS上で稼働しているミドルウエアの移行となると難易度は上がる。既存システムのアプリケーションには、32ビットのものやUTF-8でない文字コードを利用しているものもあり注意が必要だ。
商用UNIXをクラウドへ移行
クラウドベンダーの仮想サーバーで提供されるOSは、新バージョンのLinuxやWindowsがメインだ。Linuxが使われる前は、SolarisやHP-UX、AIXなどの商用UNIXに、各ベンダーがサポートするミドルウエアをインストールしてシステムを開発してきた。
商用UNIXをサポートしているクラウドベンダーはごく一部であり、メジャーなパブリッククラウドでのサポートはない。そのためDXに向けて、パブリッククラウドを利用できるようにLinuxかクラウドネイティブなサービスに載せ替えたい。
ただし、ベンダーの依存性が強いミドルウエアもあるので、システムの構成要素を分解して商用UNIXの移行を検討する必要がある。
商用UNIXで利用していたミドルウエアの中にはLinuxをサポートしているものもある。この場合、OSを商用UNIXからLinuxに変更してミドルウエアをインストールすることで移行のハードルを下げられる。
注意点としては、移行時にミドルウエアのバージョンが上がることだ。古いバージョンで作った帳票などのファイルが新しいバージョンでは動作しないこともあるので仕様の確認が欠かせない。既にOSSで構成されているのであれば、コンテナ化など可能な限りクラウドネイティブでの作り替えを進めたい。
メインフレームの移行も不可避
メインフレームのクラウドへの移行はどう考えればよいのか。メインフレームは企業によって独自性が強く、COBOLやアセンブラを業務の仕様に合わせてカスタマイズしている。
最近になりクラウドベンダーからも少しずつ移行支援ツールが出てきているが、カスタマイズが多いシステムでは標準的な移行方法とは異なる。そのため、例えばCOBOLからJavaへの変換を試みても、カスタマイズ部分の変換が必要になるケースが多い。
このように現時点では移行のハードルが高く、メインフレームをそのまま使い続けている企業は依然として多い。ただし国内メーカーはメインフレームから撤退傾向にある。COBOLをJavaに変換できれば、UML(統一モデリング言語)などの技術でリファクタリングしてより高度な実装への変換も可能になる。企業にとってDX推進は不可避。そのため、高度な変換によるクラウド移行は避けて通れない。