りそなホールディングスが地銀との緩やかな連合づくりを推進している。りそなが持つ競争力のある商品やシステムを地銀に提供する。目指すは地銀のDXパートナー。システムも外部連携に適した構成につくり変える。
「店頭まで含めてデジタルプラットフォームをトータルで提供している企業はりそな以外、見当たらなかった」。茨城県を地盤にする常陽銀行の田中正樹経営企画部副部長兼IT戦略室長は、りそなホールディングスのバンキングアプリの導入を決めた理由をこう明かす。バンキングアプリは「りそなグループアプリ」をベースにしている。店頭に置くセルフ端末の導入も検討中だ。
りそなは今、「オープンプラットフォーム」を掲げ、地域金融機関との緩やかな連合づくりを模索している。りそなの商品やシステム、人材を地銀に開放し「ウィンウィンの関係を目指す」(りそなの南昌宏社長)。地銀再編は資本提携まで踏み込むケースが多いが、りそなは資本提携ありきで考えてはいない。
りそなが地銀と組む狙いは2つある。1つは地銀に商品やシステムを提供し、利用料を得ること。もう1つはアプリなどの利用者基盤を拡充し、データ分析など新ビジネスの創出につなげることだ。りそなの野口幹夫取締役兼執行役は「グループアプリは2022年度末までに500万ダウンロードを目指しているが、地銀が加われば1000万人規模が使うアプリになり得る」と期待を寄せる。
「りそなとは目線が近い」
オープンプラットフォームが具体化した第1弾が、常陽銀行や足利銀行を傘下に持つめぶきフィナンシャルグループとの提携だ。めぶきは2020年度中をめどに、りそなのグループアプリをベースにしたバンキングアプリを導入する。セルフ端末の展開も検討している。
なぜりそなだったのか。理由はりそなも傘下に関西みらい銀行やみなと銀行という地銀を抱え、似通った経営課題に直面していたからだ。常陽銀行の場合、同行の担当者が実際に会えている顧客の割合は2割に満たず、会えていない8割超の顧客との関係強化が課題だった。りそなのバンキングアプリはこの課題を解決する武器になる。
常陽銀行の細貝聖経営企画部IT戦略室主任調査役は「デジタル分野を自前でやり切るのは限界がある」と打ち明ける。同行はデジタル分野の提携先としてりそな以外にインターネット銀行やFinTech企業なども検討したが「りそなとは目線が近かった」(田中副部長)。りそながめぶきの「DXパートナー」の役割を果たすわけだ。
りそなはオープンプラットフォームで、バンキングアプリやセルフ端末の外部提供だけを考えているわけではない。地銀から要望があれば、りそなの投資商品である「ファンドラップ」などの提供や勘定系システムの共同化も視野に入れている。
勘定系システムの共同化に当たっては、2003年に旧あさひ銀行のシステムをりそな銀行と埼玉りそな銀行のシステムに論理分割したのをきっかけに、マルチバンク対応を終えているという。地銀はりそなと勘定系システムを共同化することで、顧客がりそなの店舗の窓口でも取引ができたり、通帳や伝票を統合したりできる。
りそなの野口取締役は「これまでのオペレーション改革で事務量を半分以上減らした。地銀はその実績をすぐにでも享受できるのでメリットは大きい」と自信を見せる。