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DXを全社的に展開するには推進を支援する組織が必要である。3つの考え方を基に組織化し、そのメンバーには5つの役割を用意する。今回は、DX推進組織の考え方や備えるべき役割、メンバーに必要な役割を解説する。

 業務改革型DX(以下DX)では、センサー、無線通信、AI(人工知能)、ロボットなどの新しい技術(=デジタル技術)を活用します。また、デジタル技術を活用して改革する業務は、従来の情報システムがあまりサポートしてこなかった営業や製造、物流、保守サービスなど現場の直接業務が中心になります。

 そのため、DXの取り組みでは、企業内のどの組織が企画・構想をまとめるのか、新しいシステムを構築・維持・改善するのかが曖昧なことがあります。そのような状況では、DXを全社的に推進することはできません。そのため、DXに取り組む際には、企画や構想の立案、システムの構築や維持・改善に責任を持つ組織を明確にして進めることが重要です。

 また、DXを推進する組織が決まっていたとしても、その部署にDX推進に必要な役割を果たせるメンバーがいなければ、DXを効果的、効率的に進めることはできません。そこで、DX推進に必要な役割と、その役割に必要な知識やスキルを理解して、推進組織に配置することが重要です。

 今回は、DXを推進する組織はどうあるべきかという考え方や備えるべき役割、メンバーに必要な役割と求められる知識、スキルについて解説します。今回も、日経ITソリューションズの中堅SE村山さんが担当する架空の事例、マイルス精工の「工場DXプロジェクト」を交えて学んでいきましょう。

 日経ITソリューションズの村山が担当する川崎工場を対象としたDXプロジェクトは、平塚工場と浜松工場でのDXプロジェクトの成果物やシステムを活用することで比較的順調に進んでいた。現在、全体計画フェーズの終盤に差し掛かっている。そんなとき、村山は、IT部の松本部長から呼び出しを受けた。

「川崎工場のDXも順調に進んでいるようだね」

 松本部長がねぎらいの言葉をかけた。

「はい。松本部長のアドバイスのおかげです。」

 村山は笑顔でお礼を述べた。

「工場のDXがうまく進んだことで、社長がとても喜んでいるよ」

 松本部長が本題を切り出した。

「社長は、DXを物流や保守サービス、営業にも展開したいと考えているんだ」

 村山は話を聞きながら、松本部長の用件が、別の部署で始めるDXを手伝ってほしいというものだと想像した。しかし、次に松本部長から出た言葉は意外なものだった。

「全社展開の前に、DXの推進組織を作ることになったんだ。その組織の素案を作る検討を手伝ってもらえないだろうか」

 村山の担当する工場DXプロジェクトでは、松本部長がIT部の中からデジタル技術に詳しいメンバーを選抜して推進した。しかし、IT部では、これまで主に基幹システムの構築と運用を中心に行ってきたため、デジタル技術に詳しいメンバーは少数だった。マイルス精工で全社的にDXを展開するには、DXを推進する組織が必要だということは理解できた。

「分かりました。ぜひお手伝いさせてください」

 村山は、これまで新しい組織の設計や立ち上げに関わったことはなかった。しかし、松本部長からの依頼は興味深いものだったため、思わず即答してしまった。

 松本部長との打ち合わせから1カ月がたち、DX推進組織の検討が開始された。マイルス精工側で一緒に検討するメンバーは松本部長の他には1人だけだった。