DXで解決すべき課題を業務部門中心の体制で決めるには、前段で対象とする事業や業務の内容を把握することが重要だ。今回はDXの対象事業・業務を調査し、整理する方法を解説する。
本連載では、デジタル技術を活用して業務のやり方を改革する業務改革型DXの要件定義の進め方を解説しています。
最初のステップ1「方針と実行計画の立案」では、DX推進テーマ(目的と達成事項)や対象範囲などをDX推進方針として整理し、検討体制などの実行計画を作成・オーソライズしました。 次は、業務部門の代表者中心の検討体制で、DX推進テーマ実現のために解決すべき課題を決定します。この検討を行うのがステップ2「現行業務と問題の把握」とステップ3「問題分析と課題の設定」です。
ステップ2で現行の業務内容とそこで発生している問題を把握し、ステップ3で現状の問題を分析して解決すべき課題を決めます。今回と次回はステップ2「現行業務と問題の把握」のやり方を解説します。
今回も、「工場DXプロジェクト」で要件定義の支援を担当しているITベンダーの中堅SE村山さんの事例を交えて学んでいきましょう。
2020年3月、マイルス精工では「工場DXプロジェクト」の推進方針と実行計画が役員会でオーソライズされた。これで4月から業務部門やIT部門のメンバーが参加した体制でプロジェクトを正式にスタートすると決まった。
日経ITソリューションズの村山は、その報告と次に実施する現行の事業と業務を調査する方法についてアドバイスを受けるため先輩SEの工藤を訪ねた。工藤は社内で名の通った超上流工程のエキスパートだ。
「工場DXプロジェクトが正式に立ち上がることが決定しました」
「そうか!おめでとう。いよいよだな」
工藤は温和な表情で声をかけた。
「はい。キックオフの前に現行の事業と業務の内容を理解しておきたいと思います。そのやり方を教えてください」
キックオフとは、検討体制に選ばれた全てのメンバーを一同に集めて行う、正式にプロジェクトを立ち上げる会議体だ。
「OK。それじゃあ事業内容を調査するやり方から説明しよう」
4つの手順で問題を把握
ステップ2「現行業務と問題の把握」では、対象範囲として決めた事業と業務の現行内容を調査して視覚的な図や表に整理し、業務部門の代表であるプロジェクトリーダー(PL)や検討メンバーそれぞれが考える現状の問題を集めます。ここで集めた問題がステップ3で解決すべき課題を決める際の材料になります。
ステップ2は4つの手順に分けて進めます。今回は手順1と手順2のやり方を解説します。