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DXの目的を実現するために解決すべき課題を決めるには、現状の問題構造を明らかにして、その中から重要な問題を選ぶ。今回は問題関連図を使って解決すべき課題を決める方法を解説する。

 業務改革型DX(以下DX)は、デジタル技術を使って業務のやり方を改革し、生産性を高めたり新たな付加価値を創出したりする取り組みです。デジタル技術はこれまで業務であまり使われてこなかったため、業務部門のメンバーには何ができるのか十分に理解されていません。また、デジタル技術がなくても業務を行うことができます。業務部門はDXに積極的ではないと考えておくべきでしょう。

 そのためDXで成果を上げるには、DXの取り組みに対して業務部門から理解と協力を取り付ける必要があります。特に、DXで解決する現行業務上の問題や課題について、業務部門と十分に合意しておくことが重要です。

 現行業務の問題を分析してDXの目的を実現するための「解決すべき課題」を明確にし、業務部門の代表者と合意するのがステップ3「問題分析と課題の設定」です。今回と次回はその実施方法を解説します。今回も、ITベンダーの中堅SE村山さんが担当する架空の事例を交えて学んでいきましょう。

 日経ITソリューションズの村山は、顧客であるマイルス精工の「工場DXプロジェクト」で要件定義フェーズを支援している。2週間後の金曜日と土曜日には、プロジェクトリーダー(PL)と検討メンバー全員を集めて「問題分析ミーティング」を開催する。この会議は、PLと検討メンバーそれぞれから集めた現状の問題と改善要望をインプットとして、DXで解決する問題・課題を決定する重要なものだ。

 その会議を前にして、会議の進行を担当する日経ITソリューションズの中堅SE村山は、先輩SEの工藤を訪ねた。工藤は社内で名の通った超上流工程のエキスパートだ。

「再来週に問題分析ミーティングを開催することになりました」

「そうか。DXを成功させる上で重要な会議になるぞ」

 工藤が穏やかな表情で、それでいてしっかりとした口調で言った。村山は真剣な表情で頷いた。

「問題分析ミーティングではどういう点に気をつける必要がありますか?」

「DXの目的を実現する上で重要な問題を、全員が納得する形で決めることが大切だ」

 工藤が強い口調で言い切った。

「問題分析ミーティングの前に準備しておくことについて教えてください」

「しっかり準備しておくことが重要だ。説明しよう」

ステップ3は4つの手順で進める

 アンケートやヒアリングで集めた現状の問題や改善要望は、あくまで個人の意見にすぎません。全体から見て重要ではない問題が提起されたり、重要な問題の抜け漏れが生じたりします。また、問題の重要性に関する認識がメンバーの間で異なることもあります。そのため、個人の意見をそのまま受け入れて解決策を検討すると、不要な要件が抽出されたり必要な要件が不足したりして手戻りの原因になります。

 そこでステップ3「問題分析と課題の設定」では、PLと検討メンバー全員での議論を通して、現状の問題構造を確認した上で、総意の上でDXで解決すべき問題・課題を決定します。

 ステップ3は、手順1「問題分析ミーティングの準備」、手順2「問題構造化と解決課題の決定」、手順3「課題の充足と評価」、手順4「解決に向けたアイデアの収集」の4つの手順に分けて進めます。この中で手順2から手順4は問題分析ミーティングで行います。今回は手順1と手順2のやり方を解説します。

図 ステップ3「問題分析と課題の設定」の手順1「問題分析ミーティングの準備」と手順2「問題構造化と解決課題の決定」を解説する
図 ステップ3「問題分析と課題の設定」の手順1「問題分析ミーティングの準備」と手順2「問題構造化と解決課題の決定」を解説する
要件定義ステップ3「問題分析と課題の設定」の手順
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