デジタル技術を使った課題の解決策を検討するには、まず、現状の問題と発生原因を明らかにして改善ポイントを発見する。今回は5つの要素を使って改善ポイントを発見する方法を解説する。
DXの目的を実現するために解決すべき課題を決めたら、いよいよデジタル技術を使った新しい業務の仕組みを「課題の解決策」として検討します。
センサー、無線通信、ビッグデータ、AI(人工知能)などのデジタル技術は、これまで業務部門であまり使われてこなかったため、ほとんどの現場担当者は十分に理解していません。そのため、業務部門に「何をデジタル化したいか」「デジタル技術をどう使いたいか」と聞いても、良い回答は期待できません。
そこで課題の解決策の検討は、ITエンジニア主体で行います。もちろん、業務部門の中から「デジタル技術をこう使いたい」という意見が出れば、それを吸い上げて参考にします。
今回と次回は、デジタル技術を使った課題の解決策の素案を検討し、業務部門の合意を得て決定する方法を解説します。今回も、ITベンダーの中堅SE村山さんが担当する架空の事例、マイルス精工の「工場DXプロジェクト」を交えて学んでいきましょう。
日経ITソリューションズの村山は、先週末に実施した「問題分析ミーティング」の結果報告に先輩SEの工藤を訪ねた。工藤は、社内で名の通った超上流工程のエキスパートだ。
「おかげさまで問題分析ミーティングを無事に終了することができました」
「DXで解決すべき課題について業務部門から合意を得られたかな」
工藤が穏やかな表情で質問した。
「はい。プロジェクトリーダー(PL)も検討メンバーも十分に納得してくれたと思います」
「よかった。DXでは解決する課題を業務部門と合意しておくのが重要だ」
工藤の言葉を聞きながら村山はしっかりとうなずいた。
「次はいよいよデジタル技術を使った課題の解決策を検討します」
「そうか。まずは解決策を検討する単位を決めることだよ」
工藤は村山を見つめながら言った。
「えっ。解決策は本質的課題ごとに検討するのではないのですか」
村山は不安な様子で質問した。
「そうとは限らない。説明しよう」